【感想】『婆婆ホラー』川渡六文銭 編

「婆婆ホラー」(開式堂 / 文学フリマ東京35 Y-33〜34) - 文学フリマWebカタログ+エントリー
文学フリマ東京35(2022/11/20(日) 12:00〜)【開式堂】のアイテム「婆婆ホラー」をチェックしてみよう!

 文学フリマ東京35にて入手。『老婆』をテーマにしたホラーアンソロジー。

 テーマとしての引きもそうだし、この表紙の「山と思いきやよく見たら老婆」がなんだか笑えてしまって買いにいこうと思っていた一冊。老婆って、女性が一定以上歳を取ったら老婆だとするならば、定義上それは世の中に極めてありふれているわけで、そういう見方をすると普遍的すぎて怖い存在には思われない、でもその一方で、老婆をテーマにホラーをやりますと言われたら、納得感がしっかりあるというか、うん、老婆とホラー、相性めちゃくちゃ良いな、あるあるだよね、という気もしてくる、不思議なトピックだ。収録作はどれも老婆をフィーチャーしつつ、そのやり方は意外な幅があって、なんとなく自分は怪異として怪しい老婆が現れるというパターンを想像していたところ、血縁者としての祖母など年老いた女性が出てくる作品、また怪異とは違った立場で老婆が出てくる作品などもあり、バリエーションに富んで面白かった。特に好きだったのが、サツキ「ことりば」と円件「おつかれさまです」の二作。「ことりば」は、怪異の存在感がしっかりしていて、読み進めるうちに明らかになる構造やタイトルの使い方、オチの引き方も巧みで、クオリティ高い怪談だと思った。「おつかれさまです」は、意味のわからないタイプの気味悪さ、怖さがいい。最後の方のタクシー運転手めちゃくちゃ好き。語り手の信頼できなさも良い味に繋がっている。あと、アンソロジー全体が枠物語にしてある趣向も良かった。

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