『まほり』 高田大介

 めちゃめちゃめちゃめちゃ面白いです絶対読めいますぐ読め!!!

 自分的にクリーンヒットです。

 伝奇ミステリ長編。説明のつかない不気味さが分厚い資料(テキスト)に彩られて濃密に組み立てられています。都市伝説、怖い話から入っていって、調査をしていくうちに今も続く因習に行き当たり冒険譚に展開していくという王道にして、詰め込まれた具は生半可なものではなく、作者の取材量はいかほどのものか、唸るしかない。ちりばめられた素人には読めないテキストも、作り込まれた民俗学的要素も、けれど、設定だけで上滑りしないように、キャラクターが魅力的で、展開にもドラマがあって、いやこれは本当に、本当に面白いんで、読んでください。まず扱っている題材が自分は好きだし、このちょっと怖い都市伝説の入りからもう好きだし、それで田舎に調査しに来たというあるある設定ももう好きだし、ヒロインが愛嬌のあるモグモグ系幼馴染みだと思ったらいきなり主人公(社会学専攻)が読めない碑文を代わってすらすら読み下しはじめた(司書なので)時にはもう「好き」と声に出た。そういうのなんだよ。そういうのを読みたいんだよ。そしてラストのオチはまあ、方向性はそうだろうとは思ってはいたけど、主人公の造形を、屈託を、そしてそこにヒロインが向ける視線とか、もう一人の主人公である淳君のボーイミーツガールへの解像度とか、そういうものを一文でぎゅっとこう、引き絞る、目が開かれるとでも言うのか、ともかく良い、好きな終わり方だった。終盤の展開がある意味安定しすぎていて、ともすればあっけないなとも感じられて、でもちゃんとこっちを良くさせて終わりにしてくれますよねという期待に200%で答えてくれる、最高の作品だった。

 高田大介先生は、『図書館の魔女』を読んで、間違いなく大人になってから読んだファンタジー小説として最高の一作だと自分は思っているのだけれど、それが次に出した作品が伝奇ミステリでここまですごいとなると、あ、これは本当にすごいと思うし、もっとたくさん書いて欲しいと思うけれど、これだけ濃い作品なのでそうそうバシバシ書けないだろうとは思うんだろうけど、でも書いて欲しい、超応援しています。とりあえず今まで全部Kindle版買ってたけど紙の本も買い集める。『図書館の魔女 霆ける塔』に備えていくぞ。

『華氏451度』 Ray Bradbury 伊藤典夫訳

 洒落臭い表紙の新訳。実は読んだことが無かった。

 思ったよりよくわからないというか意識が解離してる描写が多くてこれどうするんだよと前半は思っていた。でも後半で急にディストピア物のテンプレ感が出てくる……というのは多分逆で、これが本家でインスパイア元なんだろう。作中で、どんどんみんなが馬鹿になって物事が要約されて圧縮されて短くなってみたいな話があったけど、まさに現代化に伴って今のディストピア物はこんなスピードではやっていけなくて開幕自宅炎上くらいには加速しないとダメだろうなとか思うと面白かった。

『ミザリー』 Stephen King 矢野浩三郎訳

 怖すぎる!!!!

 またなんで買ったのか覚えてない系の積読消化。映画は見てない。作家が狂ったファンに監禁される話なのは覚えてたけど、そんな怖いやつだと思ってなかったから、え、そこまでやる? え? マジ? となってしまった。ガチの怖いやつ。狂気と狂気のぶつかり合い。凄まじいパワーの作品だった。

『丸太町ルヴォワール』 円居挽

 昔懐かしい香りがする……。変な名前のキャラが無駄な話をしているパートはなんか色んなもの(婉曲)を劣化させたみたいな感じ(婉曲)になっててちょっとつらかった。1章で挫折した読者の屍が見える見える……。しかし後半、双龍会とかいうトンデモバトルが始まってからは無茶苦茶になるのが面白かった。こういう勢い好き。オチも良かった。こうなると続きが読みたい。

TENET

 なるほどね。

 ネタバレしたくないしそもそもよくわかってないからなんとも言えないけど、すごい作品だった。でもこれ企画書のレベルだとすごさが伝わらなさそうというか、ノーラン作品ですと言われなかったらボツにされそうなぶん投げだし、ツッコミどころありまくりだし、でもノーラン作品だしすごいからすごかった。

『首無の如き祟るもの』 三津田信三

  刀城言耶シリーズ3作目。といっても刀城言耶あんまり出ないんだけど、そのあんまり出なさが良い形で活用されててすごすぎた。

 今回は初めから本文が連載小説であることが明示された上で、作者が犯人ではないですとかわざわざ断り書きがしてある。これをどういう形で使うのかなと思っていたがきちんと満足できる内容。また、タイトルの通り首無し死体ものなので、セオリーとして入れ替えトリックの疑いが常にかかってくるというところも、これまた最大限活用したすごい作品だった。このクオリティでシリーズ作品が出せてるのすごすぎるな。

Observation

公式サイト

 SFスリラーゲームということになっている。 低軌道宇宙ステーションObservationを舞台に、何らかの事件が起きて主人公が意識を取り戻すと、ステーションの電力が低下、地上との通信が途絶し、他のクルーとも連絡が取れない……という状況で謎を解いていくアドベンチャーゲームなのだが、プレイヤーが操作するのは主人公(?)の宇宙飛行士Emma Fisher、ではなく、宇宙ステーションの管理AI・SAMだというのがこのゲームのポイントです。AIになってEmmaを助けるためにハッチを開けたり閉めたり故障したシステムを復旧させたりする。ゲーム開始時点でSAMは機能の大部分が使えない状態だし、メモリーコアの大部分を損傷していてなぜこのような状況に陥ったのかもわからない。しかしどうやらSAM自身もこの事象に大きく関わっているらしいと段々わかってくるという趣向。『2001年宇宙の旅』にインスパイアされた作品であることが制作側から明かされており、確かにSAMのポジションはHAL9000的であるし、他にも明らかに『2001年』オマージュ的な要素も登場する。

 ゲームとしてはクソだるいと言わざるを得ない。管理AIであるSAMは、基本は宇宙ステーションを構成する各モジュールに2、3個ついているカメラを操作して、パンし、ズームし、ラップトップであったりハッチのコントローラーであったりに接続してそれらを操作していく。しかしその接続というのがなぜか数字3桁を入力するという謎操作であったり、ハッチがロックされているときは回路図のグリッドを表示して別途入手しておいたコードの通りになぞる、とか、挙げ句の果てには特に説明無く磁力を調整して核融合炉を安定させろとかいう無茶ぶりを受けることになる。超高度AIも実はこんな地味な手探り作業をしていたのか……。次に何をしろみたいなミッションは画面に表示されるのだが、●●に向かえと言われてもそれがどこにあるのかわからなかったり、必要な操作対象がかなり見つけにくいところにあったり等、不親切さにより過剰に難易度が高いと言わざるを得ない場面もいくつかあった。

 しかし、そのゲームのだるさをしてなお、この作品はともかくかっこいい。まず上記のトレイラー見たらわかると思うけれど、グラフィックのクオリティが非常に高く、作り込まれた宇宙ステーションの内部をノイズ混じりのカメラ越しに見る没入感は半端なものではない。演出のかっこよさも抜群で、映画みたいなクオリティがある。声優のクオリティも高い。SF系の映画、それこそ古典では 『2001年宇宙の旅』 、わりと最近ので言えばゼロ・グラビティ(Gravity)とかインターステラーとか好きな人は、やるべきです。ゲームはだるいけど。ゲームは本当にだるい。

Dark Souls III

 そうさね。

 参加している文芸同人ねじれ双角錐群において、群員(群員?)にやたらフロムゲー好きな人が多くてよくソウルライクどうこうみたいな話になるけど(文芸同人なのでいつもゲームの話をしている)ソウルライクって言うけどそもそもダークソウルやったことないんですよねと言った瞬間激しい布教を受けて(文芸同人なのでいつもゲームの話をしている)プレイしました。とりあえず3がおすすめという話になり、1からやらないとストーリーわからんとかはないんですか、と問うと、どっちにしろストーリーはよくわからないので大丈夫という信頼できそうな情報が得られたので(文芸同人なのでいつもゲームの話をしている)普通に3からやりました。

 面白かった。ちょうどいい歯ごたえで難易度が高く、探索が楽しく、ボスが強く、練習して勝つスタイルで、装備やビルドの幅で何度も遊べる(遊べそう。今はとりあえずDLC含めて一通り一周目をクリアした状態)。ストーリーは確かによくわからないけど雰囲気がかっこよすぎる、テキストがいちいち良い。言い回しがめっちゃ気に入ってしまう。パリィして騎士を殺すのが楽しすぎる。苦労したボスはサリヴァーン、無名の王、爺でした。サリヴァーンが一番かっこよかったな。好きなNPCは火守女とヨルシカです。

『象られた力 kaleidscape』 飛浩隆

 ぞ、象られた力……。

 短編4編。最初の『デュオ』が良かった。かなり読ませる。敵(?)の強さのほどよい感じが良いし、音楽周りの設定と描写がばっちり決まっていて、登場人物の配置に無駄がなくて光っている。すごく好き。『呪界のほとり』『夜と泥の』はあんまり響かなかった。表題作『象られた力』はイメージの鮮やかさとかアクションシーンがすごい良かったけど、最後がちょっとよくわからなかった。

吸血鬼はなぜ目玉の謎を白日の下にさらすのか?

吸血鬼はなぜ日常の謎を探し求めてしまうのか?』の第2話として、『吸血鬼はなぜ目玉の謎を白日の下にさらすのか?』を掲載しました。タイトルが長すぎる。

 日常の謎×吸血鬼×百合、って紹介文に書いてありますけど、日常の謎は怪しいし、吸血鬼も怪しくなってきたし、百合も怪しいから、カップ焼きそばがカップでも焼きでもそばでもないみたいな話になってきましたね。知らんけど。

 これから長い話を展開していくぞ! という舞台が整った感じに自分では思っているので、続きも書いていきたいと思います。しかしまずは文フリの原稿を先にやるぞ。

 そういえば第0話についてはこちらの記事で自作解説をしてみたことがあるのでよろしければこちらもどうぞ。→短編小説を書くときに何を考えているのか書く:『吸血鬼はなぜ鏡の中で上下反転しないのか?』