『ゆる密室□』ソルト佐藤

 第三十三回文学フリマ東京にて入手。現在はBOOTHにて通販もされているとのこと。

 タイトルロゴで出オチがすごいんだけど(ロゴ作ってくるの笑う)、いきなり死体が出てきて事件は別にゆるくない、あくまで密室がゆるいという謎趣向の短編。ペグ衝撃で刺さるのとこ笑った。トリックは多分なんかミステリの分類学においてはあるやつだと思うけど、表紙でこの一覧を掲げてから始めるところとか、ロジックがなんかものすごい跳躍している(よくわからなかったけど)ところとかに独自性が光っていた。あとあらすじ文を読んでこれゆるキャン△じゃなくてあれかなと思ってたらやっぱりあれだった。一番言いたかったことに同意。

『流されないように』 白樺あじと

 第三十三回文学フリマ東京にて入手。第二十九回文学フリマ東京にて頒布されていた『第一話』に書き下ろしの第二話を加えた作品。

 上記第一話を読んだときの感想にも好きなやつと書いてあったんだけど、やっぱり好きなやつ。謎解きのレイヤに地域史の挿話が重なってくる作り、好き。第一話から置いてあった伏線ちゃんと回収するの好き。また、第一話でもそうだった、謎は解けたが心は晴れない感じをしっかり繰り返してテーマとして打ち出してきたのも好き。今回はあとがきが収録されておりそのあたりに主眼があることも解説してあって良かった。『愚者のエンドロール』と『犬はどこだ』は読んだけど、他は全然読んでないので読んでいきたいと思った。

ねじれ双角錐群『無花果の断面』 11/23文学フリマ東京にて!

 私が参加している文芸同人・ねじれ双角錐群が11月23日の文学フリマ東京にて新刊を出します。

 今年のねじれ双角錐群のテーマは『群れ』。タイトル回収……タイトル回収じゃないか!!!

↑ Keep readingで続き読めるよ

 最高のテーマだと決まった日に思い、翌朝から頭を抱えることになりましたが、しかし原稿を書き終えることには群れへの感受性が研ぎ澄まされた結果か、考えてみれば群れSFというのはSFの中でもすでに確立された一分野だなと思うようになり、たとえば自分が比較的最近読んだ小説の範囲だけですら円城塔『イグノラムス・イグノラビムス』とか飛浩隆『はるかな響き Ein leiser Tone』なんか完全に群れSFなわけであり、それら豊富な先行作品の群れに追いつき、打倒していくという高い志を掲げてできた合同誌『無花果の断面』にご期待ください。

 以下、ネタバレを含まない宣伝感想。

『教室』石井僚一

AはBのまるい横顔を/まっすぐ見つめている/Bは頬杖をつきながら/窓の外をぼんやりと眺めている――教室の一景をAからZまでの視点を通して淡々と描く小さくて寂しげな物語詩。

 群れ、というと集団、そしてみんなが経験している集団生活といえば教室になりますよね。現代に生きる誰しもが持っている群れ経験を思い出させてくれる、群れの愉快さと寂しさがつまった詩。そう、詩なんですよ!

『マーズ・エクリプス』笹帽子

火協連第三開発区の管理官を務める桜井あかりは、三年前の事故で失った情報予言知能を再構成し、地火間無遅延通信を稼働させる。だがその瞬間ネットワークに流れ込んできたのは、彼女自身の死の証明だった。距離と時間を超越する、宇宙移民分散型歴史記述コンピューティングSF。

 拙作。冒頭の見た目をTwitterで宣伝したやつがあるのでそれも見てください。群れを「歴史を共有している集団」として捉えましたが、果たして群れSFになれたのでしょうか。なお、紹介文にも出てくる情報予言知能というキーワードは過去作品で使ったことがある設定ですが、続編などではなく別の作品世界です。

『大勢なので』murashit

っていうか無限なので。

 タイトルと、紹介文がずるいでしょ(季語なし)。こんなのネタバレなしで何も説明できないじゃないか!

 無限らしいです。無限ってこわいよね。

『分散する風景』小林貫

いずれ訪れる母の死を想像して夜泣きしたわたしは、代替母の死をもって心を慣らすことに思い当たる。三十代も半ばに差しかかり黒ぐろ冴えわたる不安の底に、不可抗に沈んでいく。

 短めなんですがめちゃめちゃパワーがある作品です。母親っていうのは、かけがえのない、一般的には唯一性を持つもののはずで、それだけにその死の重大性があるわけじゃないですか。そりゃ想像したら泣いちゃうよ。でもそれに対して代替母が来る。群れSFの新地平を切り開く作品。心して読め。

『電子蝗害の夜』三好景

地球上の広範な地域に突如として発生した動物の群れの異常行動、通称《群禍》の背後には、魚群探知師と呼ばれる高解像度ソナーを携えた言語学者たちの姿があった。群れによって記述される新言語で書かれた世界初の小説作品、待望の全訳。

 生物の群れというのは、蝗害に代表されるように時に暴力的で破滅的な結果をもたらすんだけれども、その単なる個体の総和を超えたすさまじい力に惹かれてしまうところもあって。そのような群れのパワーを感じさせる本格群れSF。群れによって記述される言語、などというハードな設定から何が始まるのか。見届けろ。

『なまえ』鴻上怜

不確かな恋の予感が少女の心をゆらし、知己の女は若き日々を想う。伊豆の離島の凪いだ空気のなか交わされる、いくつかのささめきこと。

 タイトルとあらすじ文がもう既に良いよね……。この作品は読んだとき、シンプルながら自分には真似できない構成だと思って感動してしまった。何食べたらこれ書けるんですか? 合同誌のラストを飾るに相応しい最高の読後感を与えてくれます。良い小説です。


 ねじれ双角錐群『無花果の断面』は2021年11月23日開催の文学フリマ東京 オ-24にて頒布! 全自動ムー大陸さんの素晴らしい表紙が目印です!! 自分も会場にいたりいなかったりします。

 文学フリマ東京の開催にあたっては、検温、マスクの着用、接触確認アプリの導入などの感染症対策への協力が呼びかけられていますので、来場前に必ずチェックをお願いいたします来場者向け案内ページはこちら)。クラスターという単語にすっかり悪いイメージがついてしまった昨今ですが、コロナを倒し、「群れ」を私たちの手に取り戻していきましょう!

 なお、例によってBOOTHでの通販も実施予定とのことです! 遠方の方などは是非ご活用下さい!

雨月物語SF合同『雨は満ち月降り落つる夜』&リフロー型電子書籍化不可能小説合同誌『紙魚はまだ死なない』の復刊

 この度、私が企画した2冊の合同誌について、Amazon Kindle Direct Publishingのペーパーバック出版(POD)を活用した復刊・再販を開始しました。

雨月物語SF合同『雨は満ち月降り落つる夜』

 近世日本を代表する怪異小説『雨月物語』の9編を、SF的視点から再解釈する小説合同誌です。

 特設サイトはこちら。また、過去にいただいた感想の一部をまとめたページがこちら

 オリジナル書籍版は2019年5月の文学フリマ東京にて頒布、また若干数をBOOTHでも通販しましたがおかげさまで即日完売してしまい、以降はKindle版電子書籍でのみ配信を行ってきました。Kindle版電子書籍を普段から利用されている方はそちらで読んでいただけるので良いかと思いますが、紙の本で読みたいという方もいらっしゃるかと思い、この度ペーパーバック版を提供することとしました。

 KDPペーパーバック版での変更点について。オリジナル書籍版は表紙にすべすべとした市松模様加工がされた用紙を使用して、印刷自体はタイトルの2行だけ、というデザインを取っていましたが、KDPペーパーバックの用紙で同じものを印刷するのはさすがに寂しすぎるかと思い、思い切って朧月デザインに変更しております。また、本文レイアウトについて読みやすくするため修正を加えました。これにより若干ページ数が増えたのと、KDPペーパーバックで使われる本文用紙がオリジナル書籍版の本文用紙よりも厚いため、全体的にオリジナル書籍版よりも分厚い仕上がりとなっております。収録作品の内容には変更ありません。

リフロー型電子書籍化不可能小説合同誌『紙魚はまだ死なない』

 リフロー型電子書籍(表示するデバイスの画面サイズや文字サイズ設定に合わせて、流動的なレイアウトで表示する電子書籍)にすることが絶対にできないオリジナル小説6編を集めた合同誌です。

 特設サイトはこちら。また、過去にいただいた感想の一部をまとめたページがこちら

 オリジナル書籍版は2020年5月の文学フリマ東京を目指して制作していましたが、当該イベントが中止となってしまったため、BOOTH通販を主として実施(通販イベントのText-Revolutions EXにも参加)。2刷目も追加し、個人的な感覚としては、通販だけのオリジナル小説の合同誌としては結構多いのでは……という部数をみなさまにお届けさせていただきました。

 上記ページにまとめたように評価するコメントを多くの方にいただきました。また、文學界2021年1月号の特集『文學界書店2021』において、作家の伴名練先生に「ハイストレンジ・ブックス」の1冊として、「次世代の筒井康隆や円城塔を予感させる実験小説群」とのコメントと共にご紹介をいただきました。大変光栄に思います。

 という反響をいただいておりながらも、内容の性質上Kindle版電子書籍を出すというわけにもいかず、一方で主宰の私がもう自家通販のしすぎで店員にマークされたくない等を言い訳に書籍版の3刷再販も行っていなかったため、あとから本書のことを知って下さった方にはお届けすることができない状態が続いてしまっていたのですが、この度Amazonの新サービスが渡りに船となりました。

 KDPペーパーバック版では一部作品の軽微な修正や、KDPの仕様上の制約への対応を行ったほかは、オリジナル書籍版と同内容となっています。こちらは表紙のデザインも変えていません(ただしオリジナル版のエンボス加工の用紙は使用できないため、通常の用紙にマットPP仕上げとなります)。

 あと、復刊に際してちょっと掌編書きました。

 以上二冊、ぜひお楽しみいただければ幸いです。

奇祭SFアンソロジー『来たるべき因習』Kindle版無料キャンペーンと読書会レジュメ公開

 タイトルが全てです!!!

『来たるべき因習』Kindle版 無料キャンペーン

 私が参加している文芸同人・ねじれ双角錐群の奇祭SFアンソロジー『来たるべき因習』のKindle版が期間限定無料キャンペーンを実施しています。まだ読んでいない人は、今すぐ無料でダウンロードするか、キャンペーンが終わってから有料でダウンロードするか、その両方か。選ぶことができます。無料がオススメです。もう読んだ人は、お友達にも教えてあげてね。(キャンペーンは11/11木の夕方まで)

 どんな小説が載っているのか? それは昨年の文学フリマ東京で本誌を頒布したときの告知記事に詳しい。以下の記事です。熟読願います。

 そんな都合の良い自薦の売り文句ではなくて、信頼できる客観的なコメントが読みたいという方は、以下の記事にたくさん掲載されています。ありがたいことです。精読願います。

『来たるべき因習』読書会レジュメ

 さらにもう一つ。ねじれ双角錐群では制作した合同誌の掲載作品の読書会を行うという因習があり、これもまた一つの奇祭なのですが、そのレジュメをなんと公開しています。内輪の活動のメモではありますが、各作品の読みの一つとして少しでも楽しんでもらえる部分があれば幸いです。後夜祭だ。

 ↑ 続きはKeep readingで読める ↑

群れ

 さて、そんなねじれ双角錐群ですが、来たる11月23日の文学フリマ東京にて、新刊の群れ短篇集『無花果の断面』を頒布予定です。以下で告知ページができています。自分も別途告知記事を書く予定なのでご期待下さい!

 ↑ 続きはKeep readingで読める ↑

(おまけ)ねじれ双角錐群既刊一覧

物語を自覚する

架空の絵画をめぐる

人類以外の語り手

神待ち

奇祭SF

『宇宙戦争』H・G・ウェルズ 小田麻紀訳

 実は読んだことなかったのがマズいかなと思って……。火星ネタの材料探しでちょっと読んで関係なさそうってなって放置してあったのをちゃんと読み直した。

 普通にいま読んでも面白いな。当時の感覚からしたらものすごい先進的なSFスリラーエンタメだったろうというのがわかるし、っていうか今でも全然楽しめる。ああ源流これなんだみたいなメタ視点で読んでも楽しい。さすがにオチというか決着方法は少し古びてしまった感があるけど。まあそれだけ使い回されまくったということか。

Kindle Direct Publishing (KDP)がペーパーバックに対応したので早速出版してみた(補遺・二冊目編)

 二冊目のペーパーバック作成作業をやっているうちに気づいたことをメモしておきます。

 元の記事は以下から始まる3本です。

ISBNについて

 最初の記事の追記にも書きましたが、KDPで無料取得できるISBNは、「979-8」から始まります。これが特異というか、日本で普通流通するやつじゃないよねということだけ書いておいたのですが、詳しい方に色々情報をもらいました。例えば以下。

 引用されているとおり979-8は米国出版社およびself-publishers(KDPがどちらに該当する扱いなのかは定かではない)がグローバルに利用できるということだそうです。なお、そもそも大前提として、公式の記載にあるとおり「KDP が提供する無料の ISBN は、KDP で Amazon およびその流通パートナーに配本する場合にのみ使用できます。この ISBN は、別の出版社やセルフ出版サービスでは使用できません。」ということなので、このISBNコードを取ったからAmazon以外の販路でどうこう、みたいなのはそもそもないです。まあ趣味でやる分には飾りだと思って気にしなくていい気がする。気にしないようにするにはあまりにもデカい。

表紙テンプレートツールについて

 英語じゃんとかインチじゃんとか散々言いましたが、改めて使ったら日本語にバージョンアップされてました。PDFファイルをIllustratorで開いてガイドを付けた画面がこんな感じです。改善が進んでいますね。

本文用紙について

 ページ数の多い本を作ろうとして気づきましたが、計算ツールの背幅の出力結果から考えるに、当初書いていた70Kということはどうやらなさそうです。90Kかな?(以上、クリームの方の紙の話です)

 また、テンプレツールで両方試すとわかりますが、本文用紙が白のときとクリームの時で背幅が変わります。具体的には白よりもクリームの方が厚いようです。(クリーム選んだつもりなのに白になってしまっていて、表紙ファイルをアップロードしたら大きさが違うって怒られる事象が発生して苦しめられました……)

おまけ

『雨の日も神様と相撲を』 城平京

 なぜこの題材で書こうと思ったのか。かなり異色作なきがする。

 異色な設定の活かし方や終盤の着地点は良かった。さすがに主人公が無根拠に強キャラすぎるのではというのと、殺人事件のほうが挿話として刺さり方があまりにも浅すぎないかというところが気になった。

『その可能性はすでに考えた』 井上真偽

 論理プロレス。明らかに噛ませ犬でしょみたいなキャラ(因縁あり)が次々出てきて不均衡論理バトルを挑んでくる無茶苦茶ぶりが笑える。雑なバトル漫画じゃん。もう2人目出てきて同じ形式のバトル始まった段階でこれラスボスの攻撃ぜったいアレでしょと思ったら案の定それだった。でもその無茶苦茶な中にきちんとロジックを(無茶苦茶なりに)作り最後まで多段で落として綺麗にしてくるのは安定感あって良かった。

↑マジで何