【感想】『飽くなき地景』荻堂顕

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 不動産事業で成り上がった昭和の旧華族に産まれた主人公は、収集家であった祖父が遺した家宝の刀を守ろうと考えるが、芸術に理解のない父によってその刀は渋谷の愚連隊の手に渡ってしまう。

 高度経済成長期の東京を舞台とする、日本刀をキーアイテムにした一族のノワール。読み応えはあり、節目節目のヒキが強い(色々と絶妙なタイミングで絶妙な鋭い切っ先を放り込んでくるのがとても上手い)。その一方、全体としてはあまりノリきれなかった。構図を単純にさせたくなかったのかなと思うけれど、それにしても主人公に共感していいのかなんなのかわからない書かれ方になっている印象。時代ぶった家父長制感みたいなのもそのまんま過ぎるように感じた。

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