【感想】『ループ・オブ・ザ・コード』荻堂顕

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 帯文にしつこく二回も書いてあるしインタビューでも明言されているので書くけど、『虐殺器官』フォロワー。設定にしても文体にしても、もろ『虐殺器官』、というか伊藤計劃でありながら、でも2020年代にアップデートされた質感と問題意識だと思った。疫病禍という現実からの地続きの先に持って来た〈抹消〉と〈イグノラビムス〉の設定は荒唐無稽なスケールでありながら、書き込みに説得力がある。メインのテーマも出生の問題と、『虐殺器官』や『ハーモニー』とつながりながらも違う面の生命倫理を問うものになっていて、超意欲作だと思った。

 分量としてはかなり長めで、長く楽しめるけども、この分量要ったのか?は疑問符がつくかもしれない。それくらいテーマが盛り盛りになっている。主人公も二足のわらじでえらい忙しいし。でも、「いやそのダブルワークは無理だろ!」という無茶具合が楽しい(すごい丁寧な書き込みで無茶をやってくる)。患者とその家族や脇役たちのストーリーも書き込みがあってすごい。キャラクターはジェイムズが一番好き。英国流のところとか、腕時計おじさんエピソードとか。

 主な舞台が〈イグノラビムス〉であり、(それこそ伊藤計劃が見せてくれたような)異国の風景はあまり出てこない、というか、その色が出ないことの異常さ、がまた面白い読み味になっている。その中で挿入されたメキシコのエピソードの異国風景が、回想の郷愁具合(アルフォンソはサウダージがないと言っていたけれど!)と相まって、かなり良かった。好きなシーン。

 タイトルの過剰なまでの回収も好き。こちらのインタビューではコードでCORDもCODEも両方回収する説が出ててそれはもうズルいだろと思った(本文中でもCODEは出てきたか自信ないけど、あったっけ)。あやとりのアイテムも良くて、読む前は表紙が何をやっている絵なのかもわからなかったしそもそもなんか怖い雰囲気あるから、敵キャラなのかと思ったけど、これアルフォンソなのかな? わざわざ時計のベルトが入ってるな。

 ラストは希望のある結びであると自分は思っていて、そこがとても良かったと思うとともに、この結論に至るロジックは一度で捉えきれなかった部分がある。特にセルマの〈ドクサ〉の考え方が難しい。あとは、冒頭部では少し言及されてるんだけど、代理母出産に関する倫理的な課題については終盤では触れられないのは大丈夫だっけ。このあたりを再読したいなと思わせるだけのパワーがあった。

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