Amazon.co.jp: ベストSF2022 (竹書房文庫 お 6-3) : 大森 望: 本
「もふとん」酉島伝法
- 布団に関する想像力とその設定を肉付けするどこかとぼけた描写が良かった。寝たくなる。身体感覚に訴えかけてくる良い作品。
- 最後ちょっと急に終わった感じ。
「或ルチュパカブラ」吉羽善
- 再読作。
- 最後ふわっと怖いというか神様というか、そういうのを出してくる反転オチが良かった。
- チュパカブラなのが唐突かもしれない。
「神の豚」溝渕久美子
- 読み応えがあって良かった。E型インフルエンザ流行後の豚のいなくなった台湾という適度なリアリティと、伝統の風習のバランス感。
- 兄の話と、神豬の話と、豚の話と、それぞれ良いんだけど三つ話があったようにも思えて、それぞれのつながり、重なり合いの具合がもう少しあった方が短編としては自分好みだと思った。
「進化し損ねた猿たち」高木ケイ
- 再読作。初読時にもすごく良いと思った作品で、去年読んだ短編の中でも強く印象に残っていた一作。
- 極限状態の描写がやはり良い。
「カタル、ハナル、キユ」津原泰水
- 架空の民族、音楽、言語に関するSFとして設定の書き込みの良さに加えて、「ミノルタ」の人生のドラマがあるのがよかった。細かくは語られない薰衣猴という存在の不思議具合も良い。
- タイトルと同名のノンフィクションを紹介する体をとっているという形式が活きていないというか、最後急にそういえばそうだったなとなってしまった(その幻覚みてるっぽいパート、現実とは思われないって切って捨てるんじゃなくて、普通に読ませて欲しい)。
「絶笑世界」十三不塔
- 再読作。
- この設定の荒唐無稽さを押し切るところとか、キャラクターとか高頻度のギャグの挟み方は好き。でも扉裏の紹介文いうところの「青春小説」的方向性とかが多分自分に刺さっていないように感じた(好みの問題だけだと思う)。
「墓の書」円城塔
- 「作中死を遂げた人々のための墓」という題材はかなり好き。
- ちょっと思弁的すぎるのに加えて作者の問題意識に自分がついていけてないことであまり入り込んで読めなかった。
「無断と土」鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)
- 再読作。
- 難しくて正直読むのがちょっとしんどい。どうみても力作であることは明らかなので少し悔しい。あとがきを読むに、作者は意図と信念を持ってやっていると思うけれど、それでも、これは小説の形式では結構厳しく感じてしまった。
「電信柱より」坂崎かおる
- 今回初読作の中で一番のベストだった。
- 電信柱との恋愛という変な設定からリサの母の挿話を経てたどり着くラストシーンの光景が良すぎる。好き。
「百年文通」伴名練
- 再読作。初読時にも本当に良いと思ったし、長さ的にレギュレーションが微妙なんだけど自分も昨年読んだ中でベストにノミネート。
- なんか再読したらすごい心に来て泣きそうになりながら読んでしまった。