【感想】『Sci-Fire 2022』

「Sci-Fire 2022」(SCI-FIRE / 文学フリマ東京35 Y-17〜18) - 文学フリマWebカタログ+エントリー
文学フリマ東京35(2022/11/20(日) 12:00〜)【SCI-FIRE】のアイテム「Sci-Fire 2022」をチェックしてみよう!

 文学フリマ東京35にて入手。テーマが「インフレーション/陰謀論」とのことで、なんかすごい野心的なテーマ設定だなと思った。ただ、テーマがインフレーションと陰謀論ですと言われて想像するような直球の話は少なめで、幅広にSF短編が集まっている感じがして良かった。

 以下特に面白かった作品の感想で、ネタバレが含まれる。

名倉編「ひものがたり」

 クッキークリッカー小説。クッキークリッカー小説ってなんやねんという話だけれど、そのままに捉えたらそれこそ数がインフレしていってわけわかんなくなって最後転生したりするハチャメチャな話、を、想像するけど、そういうのとはちょっと違って、不思議な雰囲気に浸ることができる作品。最後の天啓というか、決断からくる読後感が良かった。

進藤尚典「てんどん」(梗概:伊藤元晴)

 これはプロット交換的な書き方をされた作品なんだろうと思いますが、純粋に実作が面白くて好きだった。着想としては梗概のほうに言及されている通り粗忽長屋派生的な話だと思うんだけど、後半のリターン漫才(これ自体好き)を畳みかけたところから、ぬるっと変調するのがめちゃくちゃ良い。梗概の段階ではSFガジェット性が強めで、それもそれで読みたい気がしつつも、より勢いを出したこの実作が好きだった。

大木芙沙子「力囲希咄」

 本能寺の変まわりの歴史モノをSFで裏返していく構成で、そのネタ自体はまあよくあるところ、SFガジェットの使い方と人間側含めたキャラクターの作り方がかなり好きだった。秀吉の策にしても、それを聞いた光秀にしても、いかにも「らしい」碗への向き合い方であるし、その裏側を明らかにした上でラストは爽やか。宗易は宗一が乗りこなすだろうという後処理も上手くて好き。

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