『掌編小説とエッセイのアンソロジー BALM』 オカワダアキナ他

 第三十四回文学フリマ東京にて入手。各人が二編(ときどき三編)の掌編小説+一編のエッセイを寄稿するというスタイルの合同誌。紹介文から引用すると、

アンソロジーを読んでいて、この人の作品をもうちょっと読んでみたいなあと思うことがしばしばあります。一作だけではわからなかったけど、もっと読んだらもっと好きになれるかも、もっと理解が深まるかも、また、これを書いた人が普段どういうことを考えているのか話をきいてみたい……といった欲求です。

 という企画意図とのことで、面白いな、良い趣向だなと思った。実際、こういう趣旨で企画されているからか、あえて全く違う方向性の作品を二作用意している人はそんなにいない感じがして、二作続けて読むことで、一作目だけだと判断しきれなかったことが二作目でたぶんこういうことを伝えたいんだろうなとわかるような場面が結構あった。主催のオカワダアキナさんが製作の状況や何を考えて作っているのかをtwitterなどで発信されていたのも印象的で、それを見て文フリで買いに行こうと決めていました。

 すごい数の参加者が集まっていて、赤盤と青盤の二分冊になっている。自分は赤盤の方が好きな作品が多かった。以下、特に好きだった掌編小説に一言感想です。

 ネタバレを含みます。

燐果『祭司と魔女』

  • タイトルにやられました。
  • ファンタジーっぽいタイトルから始まって意表を突かれ、祭司、祈り、魔女と接続していく構成の重ね方に意外性があり、気持ちよくてとても好き。この「僕」と「彼女」のシチュエーション自体はよくある(?)話だと思うところ、イメージの重ね方が気に入った。

えるれ『名も無き戦死は銀河を生む』

  • このめちゃくちゃ真面目な顔してなんか面白いことが書いてある(と自分は思った。最後の部分。別にそういう意図がなかったら申し訳ないんだけど)のが好き。
  • 切実な筆致から最後の四行で、そうきたかーと思って声出して笑ってしまった。一本取られた感じです。

瀬戸千歳『光跡』

  • この関係と空気感がまず好きなのですが、掌編のこの字数の中で雰囲気を見せるだけに終わらずに最後の一文がバシッと決まっているので惚れ惚れしてしまった。
  • 光とすり抜けの話題の使い方が上手い。冒頭から光の話で始まり、すり抜けに対する興味、でも本人ちょっと嫌がってる、みたいな不思議な魅力のある下りが前半に置いてあって、それがちゃんと最後のシーンまで繋がってると思った。
  • あと、実際、すり抜けるとこは見たい。

オカワダアキナ『クラルテ』

  • 子供時代の、子供からの視点を思い出して書かれている語りというのが好きで、この作品はまさにその質感があって好きだった。自分でもこの好きの方向性は言語化できていないんだけれど、この作品でいうとたとえば主人公がクラルテを「わたしはお城だと思った」と思っているのは子供の頃の感性で、同時に現在の語り手としての「わたし」は、当時の両親のマイホームを持つことへの感覚を慮れる年齢でもある。その視点の両面性が丁寧に書き込まれていることによる質感が、たとえば好きなところなんだと思う。
  • そういうところが好きな語りだったので、最後のシーンの描写から、美しさ、懐かしさ、寂しさ、などが混ざり合ったものを感じることが出来て良かった。
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