【感想】『ペテロと犬たち』谷脇栗太

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 文学フリマ東京35にて入手。掌編小説集。

 基本的にもともと朗読作として書かれたものであるという情報を知っているから余計にそう感じる部分もあるとおもうけれど、声に出す語りの魅力に溢れた作品が多く感じた。特に方言の使い方が良くて、その意味で特に気に入った作品は、「ペテロの墓穴」、「のはら」、「ひねもすのたり」。こう三つ並べてみると、「ペテロの墓穴」はちょっと怖い方向に進むかと思ったらふんわりとして終わる話で、「のはら」はちょっと得体の知れない後味の悪さがある。「ひねもすのたり」は優しい話(最後にぐっとカメラが引くというか、広くなる感じが好き)。語りの楽しさが底に共通しつつ、掌編の中でどういう方向に話が転ぶのかが読めないのも、一冊の中で飽きなくて楽しいのだと思う。

 他に、不思議な生き物が出てくる話という切り口では(というか、そういう方向の話が収録作には多いのだけれど)、「タコをもてなす」、「文献狩り」、「ウミタヌキ」の三作が気に入った。「タコをもてなす」はユーモアが楽しい。オチはそっちかよとツッコんでしまう。「文献狩り」は司書さんがかっこいい。「ウミタヌキ」は脱力系のかわいいオチが良かった。

 また、「環礁の国」もすごく良かった。一番好きかも。「ヤクの舌!」のところ笑う。

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