いわゆるベストSF(英語)。これを読む読書会に参加しているのですが、英語の小説とかこういう機会でもないと読まないので勉強にもなるしとても楽しいです。しかしなかなか読むのは大変な上、この本かなり分厚いので(Kindle版で読んでいるので分厚さはスクロールバーの霊脈で感じ取っています)かなり先は長いという感じがしています。でももうすぐ半分か? くらいまで来たのですが、もう最初の方は忘れ始めてるなと思ったので一旦ここまでのメモを残しておきます。自分メモだからあんまり作品の紹介とかしてないけど、イチオシって書いてあるやつはオススメ。
- A Guide for Working Breeds – Vina Jie-Min Prasad
- An Important Failure – Rebecca Campbell
- Drones to Ploughshares – Sarah Gailey
- The Pill – Meg Elison
- The Mermaid Astronaut – Yoon Ha Lee
- It Came from Cruden Farm – Max Barry
- Schrödinger’s Catastrophe – Gene Doucette
- Midstrathe Exploding – Andy Dudak
- The Bahrain Underground Bazaar – Nadia Afifi
- 50 Things Every AI Working with Humans Should Know – Ken Liu
- Polished Performance – Alastair Reynolds
A Guide for Working Breeds – Vina Jie-Min Prasad
- イチオシ。邦訳『働く種族のための手引き』はSFマガジン掲載、創られた心 AIロボットSF傑作選にも収録とのこと(自分は読んでいない)
- 犬SF。かわいい。
- 主観時間が伸びるところの表現がすごい。この表現形式でアクションシーンが描けるとは思わなかった。唸る。
- 最後のとこCKが生きてるのかちょっと不安になるんだけどもちろん生きてて一緒に暮らしててっていうハッピーエンド感が良すぎる。
- 砕けているけれども崩れてはいない(?)書き口語(インターネット的)文体が読みやすくてとっつきやすかった。
- 犬の天丼、カフェで戦う(ナイフ、火炎放射)とかの回収する構成も見事。
An Important Failure – Rebecca Campbell
- 楽器SF。
- 壮大。
- 本筋で詳しく説明されないのに世界がかなりヤバいことになっているというのがうかがえるのが良い。山火事、洪水、パンデミック……。
- といっても日本に住んでいると山火事に災害としてのリアリティがあまりなかったりするけれど、北米西海岸だと感覚が違うんだろうなと思う。
- 一番最後の演奏するシーンのエモさが好き。
- でも英語が難しくて正直読み切れなかった。
Drones to Ploughshares – Sarah Gailey
- ドローンSF。
- 「Query:other people?」のところが好き。アイコンタクト的、顔を見合わせる感じ。急に距離が近いというか。Bravoは音声会話にこだわってたけどここでは人間をフォローする意味もあってすぐ返答しているのがかわいい。
- 最後の台詞でpleaseを使ったりI think I’d likeなんて急にふわっとした表現、かつ、好みというドローンはそんなもの持ってはいけないと自分でいってたことを持ち出してしまうというのが決め台詞感が強くて、武装解除の承諾と同時に精神的な鎧も捨ててる感じ。上手い。
- ただ話がシンプルすぎるのでなんとなく説教臭さもちょっと感じてしまうところもあり。最後のところなんかなんというかこう、ロールに縛られなくていいんだよ!みたいな……
The Pill – Meg Elison
- イチオシ。読み応えあり。邦訳『薬』はSFマガジンに掲載とのこと(自分は読んでいない)
- 肥満SF。
- 軽い文体で皮肉やギャグも挟まり読みやすいが、かなりシリアスで怖い題材
- ギャグでは、以下のあたりが好き
- Then Walmart stopped carrying plus sizes altogether.
- People on campus avoided me like I was a radioactive werewolf who stank like a dead cat in a hot garage.
- そういうギャグを入れつつ、太っているから他の男のとこにいかないと思ってたんだろうとか、太っているのは真の姿ではない(なかった)のとか、かなり人間性の痛いところを突いてくるというか、迫ってくる物がある話。
- that maybe my dad the football player had gotten with my less-than-perfect mom because he knew she’d never cheat on him. Could never. Just like she thought I could never go out and get myself in trouble. Because fat girls don’t fuck, I guess?
- 1割死ぬという無茶苦茶な設定ながら、肥満のままのリスクの方が大きいとか正当化してそれを飲むグロテスクさ。
- Worth it, worth it, worth it:こわい
- でも反ワクチンのひとはこういう風に世界をみているのだろうかとも思えて、無茶苦茶じゃんって笑うこともできなくなったりする。
The Mermaid Astronaut – Yoon Ha Lee
- 人魚SF。
- っていうかSF人魚姫。
- 人魚姫から、人魚の美しい声、人間になるために魔女に助けてもらうけど代償を払う、とかいう要素を借りつつ、展開としてはかなり違う、というかイージーモードになっている。そもそも主題は愛ではなくて宇宙旅行、しかも基本的に手に入った。
- というイージーモード化のせいか少し平坦なストーリーに感じた。
- 全体的に描写が豊かで良い。At last they reached the witch’s dwelling. Strange phosphorescent worms and rocks indicated the entrance.とかの描写。ほかの生物の描写とかも豊かで、面白い(語彙難しいが)。
- starbaseの娯楽施設楽しそう
- Ssenかっこいい、クールな感じで
- Koi-spotted そういう風に使うんだ
- engineer-priest なにそれ(フロムゲーのビルドっぽい)
- 相対論が出てきてドライブがかかる。SFみが増す。
- オチはよくわからんというか納得感あんまりない。魔女の言ったこともあんまり聞いてこない感じ。
It Came from Cruden Farm – Max Barry
- アメリカンブラックユーモアエイリアンSF(アメリカが鹵獲してエリア51に秘匿しているエイリアンがネトウヨレイシストになってしまった)
- ギャグとか幕の作り方がそれこそシンプソンズみたいなコメディTV感
- alianのpronouns問題で揉めるのがポリコレ揶揄のギャグパートなのかと思ったら伏線(alianは普通にhe、それどころかガチガチのレイシスト白人男性)とかが笑える
- 笑って良いのか?という居心地の悪さもまた笑える
Schrödinger’s Catastrophe – Gene Doucette
- CatじゃなくてCatastropheっていうタイトルで出オチの事象崩壊宇宙SF。
- weirdだ。
- コンピューターとの応酬すき。“Never minding.”めちゃめちゃ好き。
- 文体が一々もってまわった感じでうるさい。と思ったらそれを活かしてくるnarrative mode、theatrical modeめちゃめちゃ好き。
- オチも欲しいところに来て大変良い。
- もう少しコンパクトにできたんじゃないという感じはある。
Midstrathe Exploding – Andy Dudak
- 時間SFと見せかけて多分時間SFというよりも邪教SFというか新興宗教SF的な面が強い。
- 英語であることも相まって読み解くのが難しい描写・場面が結構あり、これ誰の視点なんだ、ここで出てきたの誰、これどういう意味、等色々と考えることがあって、読んだときもそれを解いていくのが面白かった(最初母親の話なのかModwenの話なのかこんがらがって意味不明だったけど二三回読んでどんどんわかってきた)し、読書会でも盛り上がったのが楽しかった。
- 母親がどうなったのかとか
- 最後の、母親に会いに来た(推定)ところとそのあとのシーンの意味
- あたり
- 単純に語彙が難しいのに加えてオリジナル語義が使われているので非英語母語者にはこんがらがる。SF的にはかっこいいけど
- catastrophic temporal normalization
- wave-front
- Dyad
- scrip(一応言葉としてはある、軍票みたいな……)
- 時間SFとしてみたら可視光線の扱いとか適当すぎないかというところはある
The Bahrain Underground Bazaar – Nadia Afifi
- イチオシ。
- 死と意識のSF
- サイバーパンクみあり(インプラントチップが記録した死の直前の記憶を追体験させてくれる闇マーケットに通う死期の近い老婆、よすぎるだろもう)、旅情あり、重厚なドラマ有りで読み応えがあってイチオシ
- I’m for death.とかかっこいいフレーズ
- 一人称文体が良い。没入の演出にも効いてくるし、死期の近い老婆の静かさ(?)みたいなのが出ている。
- というか老婆という使い方が構成として綺麗。闇マーケットで取引される臨死体験というSFあるあるに死期の近い老婆っていう組み合わせ。
- ペトラ、行ってみたい。
- 死んでも意識が残ってたシーンの強烈さが印象的だったのでそれが何か伏線なのかと思ったけどそうでもなかったな。
50 Things Every AI Working with Humans Should Know – Ken Liu
- 創作AISF
- 創造性とはという主題を真面目にこねくりまわす前半(英語難しくて読み切れてない感あるけど)よかったし、後半のいかにも「AI同士にはわかってるけど人間にはわからない」深みやユーモアを感じさせるそれっぽさもよかった。
- 最後のオチというか補足は個人的には余計だと思う。それこそ本作のように全部AIがかいたとかならすごいけど部分的な話だと作品的には蛇足というか、なんかこう、「このペンで書きました」みたいな、ケンリュウに興味がある人は嬉しいかも知れないけど作品自体には特段必要ない情報な感じがする(でもみんなケンリュウには興味あるから、みんな嬉しいだろ!といわれれば、はい、嬉しい)。
Polished Performance – Alastair Reynolds
- これも人工知能モノだ。やっぱり流行なのか。
- 長い! この長さ要る?
- ブラックユーモアというか、悪い描写が多くて楽しい。
- タイトル、キャラの名前が宝石なことにかけてるのかと思ったけど、読書会の中でお掃除ロボがpolishするのとかけている方がメインなのではというコメントがあって、なるほどそっちが強そう、と思った。
- オチの自己認識すら没入してる(?)感じは好き。