【感想】『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』竹田人造

Amazon.co.jp: 人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル (ハヤカワ文庫JA) 電子書籍: 竹田 人造: Kindleストア

 首都圏ビッグデータ保安システムが導入され、ビッグデータ解析と武装ドローンが首都圏の治安を守る、あまり遠くない近未来。落ちぶれた人工知能技術者の三ノ瀬は、親の作った借金が原因でヤクザに臓器を売られそうになっていたところをフリーランス犯罪者を名乗る五嶋に拾われる。五嶋の計画は、完全自動運転で武装した現金輸送車《ホエール》からの現金強奪であった。

 人工知能周りの技術的な要素を扱った犯罪小説。本職(?)の作者だけあってリアルな技術と生々しいエンジニア話を素材にしつつ、展開は王道のエンターテイメントでとても楽しい。AIモノではあるがSFらしい想像力の広げ方というよりは、地に足ついた範囲でのトンデモ(つよつよエンジニア能力バトルクライムサスペンス)をやっている。SF的な超越や飛躍が薄いことは巻末に収録されていた選評でも指摘されていて、確かにSFの新人賞という前提だと的を射ている指摘だとは思ったが、でも自分はかなり好みのバランスだった(とはいえAIについて考え尽くすという意味では『AI法廷の~』のほうが明らかに一歩先を行ってるなと感じて、そういうのを踏まえて次に書いた作品なんだろうなとも思った)。

 エンタメに振り切ったキャラクター造形も良くて、主人公の鬱屈としての「お砂場」の概念、ユーザー側に”降りた”みたいな話を使ってくるあたりはえげつねえと思った。七並べじいさんが七並べで性癖歪んでるのも面白すぎた。五嶋さんについてはもう少し知りたい気もした。

『AI法廷のハッカー弁護士』「月下組討仏師」、そして本作と、竹田人造作品は三作読んで三作ともとても好きだったので、今後の作品もとても楽しみです。読んでない短編も読みたいな。

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