【感想】『怪談集 嗤う死体袋』西素東仙

 文学フリマ東京37にて入手

 文学フリマ東京37では私の所属サークルであるねじれ双角錐群が初の怪談ジャンルでの出店だったのだが、自分はあまり文フリで怪談ジャンルを見ていなかったので、事前にWebカタログ等で色々と調べていて、そのときにWeb上で公開されていた作品が面白かったので当日購入した一冊。

 基本的には実話怪談の形式で、謎めいていて後味の悪い作品が多く収録されている。特に良かった作品をいくつか挙げると、「ケンタおじさん」は子供の頃に通学路で見たおじさんの話で、子供の頃のよくわからない記憶という定番フォーマットの中で、体験者の怖さがよく出ていた。

「虚流区域」は繰り返し見る奇妙な夢の話で、かつて住んでいた故郷の記憶が大きく欠損している設定など相対的にはドラマ性が強いというか創作度が上がってくる話ではあるのだけれど、記憶に囚われたり救われたりする生々しい感覚があって好きな話。

「書き残し」は作者が怪談を整理するために使っているメモを題材にした少々メタ的な話で、文字なんだけどジャンプスケア的な(?)表現がアツくて良かった。

「腰掛けばばあ」は椅子に座ってニコニコしている奇妙な老婆の姿が見えるようになってしまった話。短い話の中にいくつか捻りが利いていて、盛り上げるシーンに視覚イメージ的な怖さ・臨場感もあって良かった。

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