【感想】”How to Serve the Dead: A Confucian Alternate History” by P H Lee

PH Lee -- How to Serve the Dead: A Confucian Alternate History
Ji Lu asked how to serve the dead. "You are yet unable to serve the living," Confucius replied. "How can you serve the d...

 改変歴史論語掌編。論語の「季路、鬼神に事えんことを問う。子曰く、未だ人に事うる能わず、焉んぞ能く鬼に事えんか。曰く、敢えて死を問う。曰く、未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん。」をエピグラフに引き、季路(子路)を主人公に話が進む。史実では、というか論語では、季路は質実剛健ながらやや軽率な面がある人物だったところ、この掌編での彼は異なり、孔子の言葉に従い「人に仕える」ことをひたすらに実践する。どこまで「人に仕える」ことをすれば「鬼神に仕える」方法を孔子は教えてくれるのか?

 作者の過去の作品を大変気に入ったので新作のフラッシュフィクションを読んでみたところ、まさかここで論語が出てくるとは思わなかった。けど最初ちょっと面白かったのが、本作では「鬼神」はthe dead、「人」はthe livingと訳されているところ。もちろん「未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん」が後に続くことを思えば、ここでの「鬼神」が示しているのはthe deadで間違っていないと思いつつ、でも言葉のレベルで言うと不思議というか、そもそもどうしてhow to serve the deadを知りたいと思うのか、英語圏の読者に伝わるんだろうか、とちょっと思った(いや、おまえわかってんのか、といわれたら自分も別に自信ないけど)。けれど、the deadとthe livingの対比が言葉のリズムとしては明らかに良くて、続いていく語りにしても孔子の返す言葉にしてもリズムの良いオシャレな文体(に自分は感じた)で、反復構造とかも合わせてなんだか存在しない”元の漢文調”が感じられる(いやそもそもそのリズム感って漢文を訓読する日本人の特異なものなんだろうけど)ような気がしてくる不思議なテイストがあった。そして孔子の教えそのものが反転するような、やっぱりしないようなラスト。良かったです。

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