【感想】”Coding Van Gogh” by Elaine Gao

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 Elysiumという、詳細はよくわからないけれどすごいアルゴリズム(これは私の読解力の問題と、作中で細かく説明されていないという、両方です)から過去の歴史の中に失われた絵画たちを取り出し保存することを生業にしている主人公が、しかし芸術にのめり込むあまり……という話。ゴッホの「星月夜」を取り出そうとしているときに主人公が事故に巻き込まれるところから話が始まる。他にもモネやマティスなど実在絵画が言及されている。小説で絵画を扱うというのは結構に野心的な題材だと思うけれど、その美しさとそれに対する主人公の感動がビビッドに表現できているのが良いと思った。本来であれば芸術史の文脈をちゃんと踏まえるべきという批評が生じうるところ、この作中ではそういう情報は一度失われてしまっている(のだろうか、多分)中で主人公はただ美しさを感情的に追っている、という読みができるのも上手いと思った。情報の失われ方でいうと、ダリの「記憶の固執」はElysiumから取り出せてなくてタイトルが失われているっぽいなどの小ネタも楽しい。キャラクターのそれぞれの特徴も鮮やかに出ていて良かった。オチはちょっとディストピアのありがちなところから抜けられていないかもしれない。

 作者は四年前にアメリカに移り住んだ高校二年生らしいです。すご……。

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