【感想】『稲生物怪録』 東雅夫 編

 稲生物怪録と総称される一連の作品のうち、「稲生物怪録絵巻」(堀田家本)、「三次実録物語」(京極夏彦訳)、柏正甫「稲生物怪録」(東雅夫訳)を収録した本。特に京極夏彦訳は読みやすくて雰囲気も出ており良い。しかし平太郎が強すぎる。どんなにヤバい怪異が来ても「気持ち悪いなあと思いながら、寝た」で済んでしまう圧倒的強者感。チート主人公。そんな中でも友人の切腹騒動の下りだけはさすがに気味が悪かったと言っているし、読んでいるこちらもここは笑えない怖さがあり、緩急の作り方として良かった。

 稲生物怪録の特徴は、他にも数ある有名な怪談と比べても、その実話設定力が具体的であるということで、舞台は広島・三次、主人公の稲生平太郎ももちろん実在人物、というのがポイントです。

 ポイントなので、行ってみました。

 すごく良かったですね。稲生物怪録のテクストの分化の解説などが非常に面白かったです。最後に槌がもらえる下りは後から追加されているという話、実話性を増しつつ話としての構造や機能に気を配った後世の補正なんだなぁと思うと非常に納得します。

 あとは実際に平太郎の屋敷があった場所に碑が立ってたり、比熊山のぼったらたたり石があったり(怖すぎて触れなかった)したのも楽しかった。

タイトルとURLをコピーしました