【感想】『ローンガール・ハードボイルド』コートニー・サマーズ 高山真由美 訳

ローンガール・ハードボイルド (ハヤカワ・ミステリ文庫 サ 9-1) | コートニー・サマーズ, 高山真由美 |本 | 通販 | Amazon

 白樺あじと『ロング・エスケープ』のあとがきにて言及されていたのに興味を持って読んだ。読んで良かった。

 まず、『ローンガール・ハードボイルド』という邦題が良いのかどうか、難しいところだと自分は思っていて、原題Sadieをカタカナにして『セイディ』ではマーケティング的に厳しいのは間違いなく、『ローンガール・ハードボイルド』という語呂は完璧だし、帯の惹句の強さも完璧であって、だからジャンル名としての『ローンガール・ハードボイルド』は良いと思う、けど、この作品の邦題として『ローンガール・ハードボイルド』が良いのかは、ちょっと自分はわからないみたいなところがありました。この一作品の邦題に意図を負わせすぎなんじゃないかというか……。作品を読むとSadieというタイトルの良さもしみじみあるので。……と、いう長い言い訳、留保、前提をおいたうえで、でも、読んでいる間『ローンガール・ハードボイルド』であることだなぁと何度も思わされた作品だった。やっぱりこのタイトルは発明ではあると思う。

 セイディの強さや痛みといったものは本当に胸に迫る。その折れない決意を読み進めるのは切実さ、やるせなさ、一筋の勇気なのかなんなのか表現しがたい明るさ、など色々なものを喚起してきた。敵を追うセイディの一人称と、それを救わんと追うウェスト・マクレイのラジオの時間差の構成も巧みで、うまく読んでいくリズムを作ってくれる。マーリー、ハヴィ、キャットなどセイディが接触していく人々もそれぞれキャラクターの魅力があり、抱えているものがあり、やはり切実。「いま最も切実」というキャッチコピーはほんとうに的を射ていると思った。ラストはそう終わるんだと意外だったけれど、これはもう終わり方の問題ではない構成の作品のように思った。ただ、ウェスト・マクレイについてはもう少し掘り下げというか明示してくれてもよかったのではとは思った。

 あと、表紙イラストが良い。

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