sasaboushi

03_作品

4代目、4台目

僕の体はぶっ飛んでくるくると回る。漫画のように回転し叩き付けられ、ずうんと重いものが体の中でガラガラいって、白いワンボックスが走り去る。当て逃げ、という言葉が浮かび、いや、ひき逃げだ。  左足からとくとくと流れる温かい血で、ズボンが台無しで...
03_作品

前兆

雄一は晴れた朝の静かなあぜ道が好きだ。澄んだ空気の中でそこに立っていると体がふっと軽くなるような感じがする。だから朝は学校に早く行く。でも今朝はそれでも一番乗りではなく、教室には綾子がいた。とにかく誰かがいればよかった。綾子は自分の席でうつ...
03_作品

発明品ナンバー21

「さあ、実際に試そうではないか」と博士。 「ええ、はやく試してみましょう」と助手。  博士と助手は苦心の末、一年をかけてこの発明品を作りあげた。『何でも見える眼鏡』である。 「しかしせっかくだから、かけたとき何が見えるか先に考えてみようじゃ...
03_作品

定例閣議

食糧大臣は、早めに首相官邸閣議室に入っていた。壁の時計では、定例閣議まで十五分。  閣議室の大臣たちは、資料を見直している者、メモを書いている者、くしで身だしなみを整えている者、氷結肉をかんでいる者など様々。氷結肉というのは、アザラシの肉を...
03_作品

久しぶり

夢の中で、僕は少年だった。正確には少年に戻っていた。12歳位で、分厚くて固い茶色のコートを着て、毛糸の手袋をして毛糸の帽子をかぶっていた。つまり季節は冬だった。たぶん僕の夢の中だからだろう、冬は僕の考える冬らしい冬だった。それは、簡単にいっ...
03_作品

所有者

僕は風呂から上がると、上半身裸のまま、冷蔵庫で冷やしておいた缶ビールを飲みだした。缶ビールなんてものは僕にとっては冷たければそれでいい。その代わり僕は野菜についてはこだわるほうで、そのときかじっていたキュウリも、信頼している産地直送だった。...