Amazon.co.jp: 図書館の魔女 高い塔の童心 : 高田 大介: 本
海峡地域の盟主である一ノ谷にあって、その元老院の諮問機関として隠然たる権力を持つ図書館の主、「高い塔の魔法使い」タイキは、高まりつつある第三次同盟市戦争の危機を回避し、またその背後に見え隠れする敵国・ニザマの影響力の排除に向けて策を巡らしていた。誰もが慌ただしく働いている図書館にあって、数ヶ月前から図書館に出仕している司書・ハルカゼはタイキの孫娘であるマツリカのことを気にかけている。マツリカは話さず、笑わぬ子であった。齢六、七にして尋常ではない量の書物に通じたマツリカはあるとき、海老饅頭の味が落ちたことを疑問に思う。魔法使いによる第三次同盟市戦争の危機回避の策謀の裏で、のちに図書館の魔女となる孫娘は海老饅頭の復活に向けて暗躍を始める。「図書館の魔女」前日譚。
公式あらすじの「一方、マツリカは好物の海老饅頭の味が落ちたことを疑問に思い、その理由を解き明かそうとする。」が好き過ぎる。「一方、地上からは、事件の揉み消しのために派遣された海兵隊と、大統領直属の暗殺部隊が迫っていた……」と同じくらい好き。
しかし公式あらすじにおいては言及されていないハルカゼの存在、ハルカゼの視点こそが本作の一番良いところだと思う。もちろん「図書館の魔女」前日譚として、全盛期(?)タイキの手腕であったり、賑やかであった頃の高い塔の様子、先代キリヒトの凄腕、マツリカの初仕事(?)のエピソードそれ自体が魅力的なファンサービスであることは論をまたないのだけれど、ある意味ではそれらは読む前から想定されていたことで、しかしそこにハルカゼが図書館に来た頃、マツリカとの信頼関係ができていった頃の話であるというのはなんというか、嬉しい悲鳴である(あらすじに書いてないのは狙っているだろう)。ハルカゼだけが気づいたマツリカの手紙のエピソードは伏線回収・タイトル回収の鮮やかさ(この暗躍ぶりのどこが童心か、と思わせてからの、これである)に舌を巻きつつ、ハルカゼと共に目頭が熱くなった。
はやくはたたいてくれ……