【感想】『TOKYO REDUX 下山迷宮』デイヴィッド・ピース 黒原敏行 訳

TOKYO REDUX 下山迷宮 | デイヴィッド・ピース, 黒原 敏行 |本 | 通販 | Amazon

 小平事件を題材にした『TOKYO YEAR ZERO』、帝銀事件を題材にした『占領都市 TOKYO YEAR ZERO II』に続く〈東京三部作〉の三部目で、下山事件を題材にしている。国鉄の下山総裁が失踪、変死体で発見される。第一章はGHQの捜査官スウィーニーが事件を追う。さらに物語は1964年、1988年へと展開していく。

 タイトルや章立てからも第一部『TOKYO YEAR ZERO』の鏡映しの構造が意識されており、『TOKYO YEAR ZERO』のキャラクターの再登場や、〈東京三部作〉自体やピース自身が内包されているような節もあり、三部作の締めくくり、クロージングタイムに相応しい大作。舞台も1988年まで染み出してくるというのがすごい。占領が終わり、下山事件は時効を迎え、天皇が病床に臥せる東京に、未だ亡霊が現れ、黒い霧は晴れていない! 読んでからかなり時間が経ってしまったので正確かどうかわからないけど(なのでかなり読み直したくなってきたが)、『TOKYO YEAR ZERO』は語り手の狂気の存在感がすごかったところ、『占領都市』はそれよりは事件の謎解きや陰謀の闇深さが前景に出てきたという印象があった。そこで『TOKYO REDUX』は両者の印象を併せ持っていて、大満足だった(しかしその分なにが起きてるのか結局わからんみたいなシーンもあったので読み落としが多そうだけど)。要約してしまうと結局陰謀論的というか、論理の飛躍した結び付けみたいなことになりそうな話なのだが、研究量と文体の迫力、狂気、においが無二の作品にしていると思う。

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