【感想】『君のクイズ』小川哲

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 面白かった。以下、ネタバレを含む。

 冒頭から主人公の脳内が完全にクイズになっている表現とゼロ文字押し回答の謎の引きの強さが完璧に決まっていて、冒頭がこんなに面白かったらもう勝ちだよ~ってなってしまう。クイズを通して人生を振り返る、クイズが自分を肯定してくれる、人生はクイズである、という主人公のクイズに対する圧倒的な信頼の表現が良くて、こっちまで心が熱く、楽しくなれる。クイズプレイヤーの思考が説得力を持って表現されることで、たとえばスポーツモノの漫画において、別にそのスポーツできないんだけどあたかもそのスポーツのプレイヤーの心理を追体験できる……というのと同種の体験が提供されているように思う(それでいうとクイズは漫画より小説という形式が上手くマッチしているのかもしれない、少なくともこの作品はやりたいことと形式があっている)。人生を辿りながらゼロ文字押しという魔術を解体していく謎解きの興奮がすごく、そして、でもその先で主人公が出した答えと実際の本庄絆は決定的にズレていて、その断絶が明らかにされるという形で、幻想が破られて、ある意味で魔術がもう一度解体される。最後は一瞬、え、そんなオチなのか、という、拍子抜け、ちょっと残念、という印象も抱いたんだけど(まあ明らかにそれ狙ってるんだけど)、魔術の解体という線で読むと納得できてくる気がする……かもしれない。少し同じ作者の「魔術師」を思い出す読み味もあった(っていうか魔術の解体という表現はそれを思い出したから)。いずれにせよ序盤中盤のページターナーっぷりが強かった。上手い小説だった。

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