【感想】『図書館の魔女 烏の伝言』高田大介

 超弩級ファンタジー『図書館の魔女』続編。シリーズ特設サイトがあるので今すぐ訪問した上で、『図書館の魔女』1、2、3、4、『図書館の魔女 烏の伝言』上、下を購入して読め。急げ。

 前作から、一体どのような続編なのだろうと思っていたけれど、読み始めるとどうも全く違う舞台、全く違う登場人物たちで、前作の登場人物たちとの関係がどうなってくるのかわからないところから始まる。登場人物一覧の最後の方に高い塔のメンツが載ってるけど、なかなか出てこない。一人、この人はあの人ですよねというのがいるけど、それだけで、いやマツリカ様いつでるんだよ、早くマツリカ様来いよ、そろそろ上巻終わるけどマツリカ様まだ……いや、上巻終わ……おもしれえ!!!という感じでした。もともと最強の安楽椅子探偵みたいなところがあるマツリカ様が、しかし自ら世界を股にかけて打って出るというのが前作の面白さの一つでもあったと思うけれど、今作は正しく安楽椅子探偵として機能していて(かなりミステリ味ある)、良くも悪くも主人公ではないところにいる。代わって、では一人主人公がいるのかと言えば一人に定まるものではなくて、より群像劇的な方向が強化されているのかなと思った。それはテーマの一つでもある、裏切り者の話にもつながってきて、何重にもひっくり返す仕掛けがとても面白かった。そういう意味では『図書館の魔女』シリーズとしてはスピンオフであり、大きな構想の中では助走・準備ではないかと思われて、キリヒトも含めた次の話が早く読みたくて仕方がない。

 前作にも増して文章がかっこよく、度々知らない言葉も出てくるけれど、読んでいて気持ちが良い。冒頭、「初夏の黎明に吹きおろす山風は冴えざえとした気流に水分を孕み、頂を覆う這松の新緑あざやかな葉叢に一つひとつ鈴をつけるように露を結びながら低く重たく谷間に這いおりていく。」から始まるシーンだけで頭をぶち抜かれてしまう。ぶち抜かれませんか?

 最後がやっぱり手紙で終わるのが好き。続編超期待。

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