【感想】『火竜の僕は勇者の君と一度も言葉を交わさない』 雲鳴遊乃実

 第8回Text-Revolutionsにて入手

 夢で繋がる系のファンタジー小説。雲鳴さんの小説は何作か読ませていただいて、地の文での心情表現の丁寧な積み重ねに強みがあるのかなと思っていて、本作でも”僕”の鬱屈や夢の中で得られるカタルシス、また後半で時間が経ったあとの記憶がぼんやりしている感じの表現などがよく書かれていて、タイトルの通りセリフ的な表現が制約を受ける設定とマッチしているなと思ったりした。

 カクヨム連載分に書き下ろしを加えたということで、カクヨムの方は読んでいなかったのだけれどおそらく「番外編」分が書き下ろしであろうと思われ、この形で読むと番外編まであって一作として成立しているなと思った。本編だけ読むと、ラストシーンの必然性がそこまでピンとこなかったのが、番外編でうまく回収されて、また「一度も言葉を交わさない」に対する別解というか、違う目線からのアンサーが描かれているのがすごく良かった。

 あと本筋に関係ないんだけど、最初火竜が「ひりゅう」なのか「かりゅう」なのかわからなかったので(いやどっちでもいいんだけど、セリフを脳内再生するときに気になってしまう。ネットで調べるとかりゅうのほうが多数派っぽい。主にモンハンのせいで)、初回登場時にルビがあると嬉しいかなと思った。途中でひりゅうだとわかるセリフがあったので(ひ、火竜!?)、それを初登場時にもってくるとルビなしでいくこともできると思う。

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