【感想】『ドンキー・アーカイヴ 第2回配本』

 文学フリマ東京38にて入手。正式な書名がわからなかったけどWebカタログの表記を採用した。第1回配本も面白かったですが今回さらに良かったと思いました。

 稲田一声「三秒」は、小説の全体が三秒間であるという作品。何でそれが実現できるのかというと、5人の子供が1台ずつ購入したレンズ付きフィルムで撮影された27枚の写真、それぞれのシャッタースピードが1/45秒だったから、計算するとトータル3秒である、というこの時点でアイデア勝ち感がある。私は見覚えがある作品(旧タイトルより直球になっているけれどシンプルでいいと思った)。トリッキーな構成から後半ちょっと先行きが怪しくなりつつ、最後やさしく終わるのが好き。

 千葉集「東寺のブックオフ」は、古本を買いたいという子どもに付き添って東寺のブックオフに行くエッセイ。あの千葉集さんがエッセイを書いたのか~と1/45秒でも思った自分を殴りたいが、けだし名作である。終始笑えるんだけど、「京セラドームくらいの空間だろうか」がドツボにハマって噴き出してしまった。良すぎる。

 暴力と破滅の運び手「夏を知らない蝶たちは」は、美術部に所属する主人公が、様々な生き物の絵を描くように求めてくる生物部のクラスメイトとともに不思議な蝶を発見する一夏の出来事。除草ヤギを連れていくバイト(?)とか、サイコパス同級生の軽い引きから入って、なんかSFっぽくなり、最終的に苦味もありつつ綺麗な青春の話に着地する、どこ行くのかわかんないけどちゃんと連れていってくれる感じ、安心感。

 ふじみみのり「アトリエの膝」は、ニューヨークの白人男性のアトリエに住み込みで手伝いをすることになった日本人・カオルの話。スムース!!のウザさがいい。私の好みの方向性ではないのであまり語れないものの、エッチな小説だと思います。

 覆面競作企画は、稲田さんと千葉さんはまあ多分これだろうなと思ってその通りでした。受賞おめでとうございます。

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