【感想】『流』東山彰良

Amazon.co.jp: 流 (講談社文庫) 電子書籍: 東山彰良: Kindleストア

 舞台は1975年の台北、主人公は十七歳の青年。祖父は中国本土から内戦で敗れ台湾に渡ってきた、主人公から見ると不死身のような人だった。その祖父が何者かに殺されてしまうところから始まる青春小説。

 1975年とか17歳とか書いたけど、実際には描かれる時間軸はもっと幅がある。ルーツである祖父の過去の断片から、エピローグよりも後の主人公に関する断片まで。中心に置かれるのは、祖父が誰に、何故殺されたのかということで、主人公がそれを追い求め、ある種の決着を付けるまでの話……ということにはなるのだけれど、人生ってそんな中心に置かれた一つだけではできてなくて、色々なことがあり、その色々なことを(時代と舞台から来るエネルギーとカオスも相まって)猛スピードで濃密に駆け抜けていく勢いがたまらない。章ごとにちょっと話がまとまるんだけどそこで綺麗に一段落させながらも先に続いていってどんどん読み進んでしまう。第五章の最後、豆花売りの声を聞いた主人公が祖父の死後初めて涙を流すところからの流れとオチ、好きすぎる。随所の台湾語、標準語も良い味。家族や兄弟分の絆もいい。馬爺爺の好好で目頭が熱くなるところは読んでて本当にそうなった。めちゃくちゃ面白かった。すごい。

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