【感想】『ホライズン・ゲート 事象の狩人』矢野アロウ

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 脳梁離断により右脳に狩猟の神を宿すことで狩人を作る風習を持つヒルギス人の少女シンイーと、左右ではなく前後に分離した脳を持ち空間ではなく時間を見通す能力を持つパメラ人の少年イオは、バディを組んで超巨大ブラックホールの探査に従事する。

 左手に銃を構えることで右脳の無意識に宿した神の力を借りて狩りをする、というのはギリ良いとして(良いのか?わかんないけどかっこいい設定だ)、前後脳が時間を見通すという設定はかなりの無茶スケール。それでやっていることがなんだかよくわからないが巨大ブラックホールを命がけで調査することで、重力井戸に潜る度にイオとシンイーの時間は大きくズレ、さらに二人とステーションの時間も大きくズレ、でもその程度のズレは(この社会では)かなりカジュアルに処理されている、というあたりもさらりとスケールの大きいことをやっていて面白い。地の文一行の間に、方や数分、方や年単位の時間が経過したりするのを本当にさらっと書いていくのですごい。その一方、設定のスケールが大きくてハードSFチックなことを扱っていながら、しかし物語のスケールはコンパクトというか、基本的にはこの二人の物語であるところは却って新鮮な感じがした。もうすこし派手さがあったほうが、という見方もできると思う(自分も若干物足りなさはある)けど、面白いスタイルで良いなとも思った。

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