【感想】『ちゃんとする』雨下雫/小島宇良(C1講義室)

ちゃんとする - C1講義室 - BOOTH
「ほんっとうに、ちゃんとして!」 彼女の罵声と平手打ちをくらった翌日、なぜか私は新潟は糸魚川へやってきていた。 なんとなく仕事を辞め、無職のままのちゃんともしていない私は、いつのまにか地球の引力から嫌われほんの少しだけ宙に浮いてしまう。 仕...

 文学フリマ東京36の新刊。私はboothで入手しました。

「ちゃんとする」をテーマに、というかタイトルに書かれた2作。「ちゃんとする」というからには、それはつまりちゃんとしていないということなんだけど、まさにそのちゃんとしていなさがそれぞれに書かれていた。

 雨下雫「ちゃんとする」は、ちゃんとしてなさすぎて恋人に愛想を尽かされた主人公が(このちゃんとしてなさ、めちゃくちゃ胸が痛いぞ)、糸魚川を訪れて石を拾う話。石であったり、「地に足のつかない」感じの表現が良いなぁ。ヌナももちろんかわいいけど、店員さんが良い。フォッサマグナミュージアムは是非一度行きたい……。小島宇良「ちゃんとする」は、クロサイが殺戮マシーンに見えることで自分のちゃんとしていなさを自覚した主人公が裏婚活パーティーに参加する話。「は?」としか言いようがない導入で始まるんだけど、こちらの主人公のちゃんとしていなさもなかなかにすごいちゃんとしていなさで、ザクザクに切れ味があった。ちゃんとしていないからちゃんとしようとする、うまくいかない、もがく、最後には少しだけちゃんとしたようなやっぱりしていないような、そんな空気感が2作とも良かった。

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