潰瘍性大腸炎の患者(軽症)が住宅ローンの団信(団体生命信用保険)に申し込んだ結果のまとめ

↑エピグラフです。

 このブログでは初めて書くのだけれど、私は潰瘍性大腸炎の患者です。

 潰瘍性大腸炎は指定難病の一つであり、重症の場合はとても大変な病気ですが、私を含めた軽症者の場合、適切な投薬などの内科的治療で特に制限のない日常生活を送ることができることが多いです。そしてこの場合、外からは見えないので、実は身近に患者がいても全くおかしくないという、ひそかに身近な難病と言えるかもしれません(ちなみに難病の中では患者数も多い)。私自身も普段は自分が難病患者だという意識は全く持たずに生活できています。興味がある人はどんな病気なのか調べてもらえればと思いますが、以降この記事は潰瘍性大腸炎について説明するものではなく、むしろ私と同じ潰瘍性大腸炎の患者に向けた情報提供の目的で書きます。

 今年色々あって家を買うことにしまして、まあ色々と悩んだすえに、よし行くぞと決めて、住宅ローンの申込の必要書類を確認していたそのタイミングで、自分が難病患者であるということを思い出しました。普段は意識せずに生活できているから。

 住宅ローンを借りようとする際、基本的には団体信用生命保険(団信)への加入が必要です。そして、潰瘍性大腸炎は生命保険の申込時に告知が必要です。(厳密に言うとフラット35等で団信を外してローンを組むことも原理的に可能だが、その場合普通は代わりの生命保険に入るということをするだろうし、潰瘍性大腸炎の患者はわざわざそれをする理由はほぼないだろうと自分は判断したのでここでは扱わない)

 告知書に潰瘍性大腸炎が名指しされているのを見て私はちょっと動揺し、すぐにインターネットで検索し、他の患者の方の多数の口コミ情報を見て、安心半分不安半分という気持ちになりました。ネット上の情報を読むに、(私のような軽症者の場合)保険会社によっては団信に入れることもある、入れないこともある、らしい。入れないこともある、というのは悪い知らせで、自分が元々本命と目していた金融機関の住宅ローンが通らない可能性があるというのは怖いと思ったものの、入れるところもあるよという情報には少し安心したし、同じような境遇の患者の人がたくさんいるというのも勇気づけられる気持ちがありました。

 最初に書いたように、そもそも軽症・寛解の場合外からは見えない病気です(まあそういう病気は他にもたくさんあるけれども)。自分自身が患者であることすら普段忘れているわけで、周りに、あるいは周りでなくともインターネットで繋がる先に患者が他にもたくさんいるという事実を普段あまり意識してなかったところ、今回検索して初めて他の患者の方たちのブログとか書き込みを読む機会があって、ああ他にこんなにいっぱいいるし、みんな頑張ってるんだなと思えたのが、なんか良いなと思ったんですよね。

 そういうことがあったので、かなり個人情報なんだけども、書き残しておこうとおもったのがこのブログを書いている理由です。

 この記事では、私と同じように「潰瘍性大腸炎 団信」で検索した人がたどり着くかもしれない無数のページの一つとして、潰瘍性大腸炎を告知してどの保険会社で申込が通ったか通らなかったかを記録・共有します。

 住宅の取得を含めた患者の皆さんのQOLの向上を祈念します。頑張っていきましょう。

前提

  • 筆者は30代で、潰瘍性大腸炎の治療中(投薬)、軽症で、診断されてから2年ほど。入院・手術経験はない(より詳細な情報はさすがにパブリックに書くのはちょっとと思ったので書かないけれど、もし知りたい方がいて個別に聞いてくれれば答えます。でも告知書って大体はごく簡単な情報しか書く欄がないので、細かい症状の濃淡は審査に影響していない気がします。手書きでフリーで書けるやつは頑張って色々書いたけど別にその分の結果が良くなることはなかった……)
  • 告知書では、潰瘍性大腸炎が治療中(投薬)であることに加えて、潰瘍性大腸炎の経過観察のための大腸内視鏡検査時にみつかった大腸ポリープ切除(良性)の手術を一年以内に受けていることも合わせて告知している。
  • 過去2年の健康診断・人間ドックにおいて異常を指摘されたり再検査になったことはない。
  • 潰瘍性大腸炎の状態についての診断書を追加で要求されることもあるらしいと聞いていたが、自分の場合は一ヶ所も要求されなかった。以下の結果は全て告知書による告知のみでの判定結果である。
  • 多くの金融機関では、住宅ローンの事前審査後に本審査を行う前に先に団信の告知を入れることができ、「告知事項があり不安なので本審査に先立って結果を教えてほしい」とお願いすると結果を教えてもらえる。融資自体の審査に不安はないが団信の方に不安があるという場合は、積極的にお願いすべし。数を多めに出して、団信が通るところの中から本命を選べば良い
  • 2023年3月ごろの情報であり、最新であることを保証しない。

結果

融資機関保険会社保険種別結果
三菱UFJ銀行明治安田生命一般承諾
東京海上日動火災三大疾病特約等(「7大疾病保障付住宅ローン ビッグ&セブン〈Plus〉 3大疾病保障充実タイプ」)承諾※1
三井住友銀行住友生命一般承諾
三井住友海上火災8大疾病特約(「8大疾病保障付住宅ローン」)謝絶
りそな銀行第一生命一般承諾※2
特定状態保障特約、三大疾病特約等(「団信革命」)謝絶※2
三井住友信託銀行住友生命一般承諾
ソニー銀行クレディ・アグリコル生命がん団信謝絶※3
住信SBIネット銀行SBI生命一般+全疾病保障(就業不能保障)(「スゴ団信」)承諾※4
3大疾病特約(「スゴ団信」)謝絶※4
イオン銀行イオン・アリアンツ生命がん団信(「がん保障付住宅ローン」)謝絶※5
(フラット35)日本生命 ※6一般承諾

※1 この保険商品はWeb申込において告知事項があればその場で謝絶(申込に進めない)、なければ基本通る(らしい)というもので、要告知事項の「消化器系の病気」には潰瘍性大腸炎は入っておらず、「その他の病気」に「厚生労働省指定の難病(指定難病に対する医療受給者証の交付を受けている方)」とあって、潰瘍性大腸炎であっても医療受給者証を受けていなければ告知対象にならない(念のため東京海上に電話で確認したが、医療受給者証の申請も交付も無しであれば告知不要とのこと)。そのため、一般団信に通っていれば、潰瘍性大腸炎があっても附帯できるオプションになるようだ。

※2 厳密には、特約は受入できないが主契約のみであれば可能、という回答だったものを、この表ではバラして記載した。

※3 謝絶時に(一般ではなく)ワイド団信を推奨する案内があったが、他で一般団信で承認されていたのでワイド団信の告知は行わなかった。電話連絡だったので、そのときに「一般団信という選択肢はあるか」と確認したところ、「保険会社からはワイド団信をおすすめするとの回答であった」という案内だった。(ソニー銀行は私の申込時点ではがん団信・一般・ワイド共にクレディ・アグリコル生命が受入保険会社)

※4 厳密には、3大疾病特約は受け入れできないが主契約と就業不能保障特約は受入可能、という回答だったものを、この表ではバラして記載した。

※5 謝絶時に(一般ではなく)ワイド団信を推奨する案内があったが、他で一般団信で承認されていたのでワイド団信の告知は行わなかった。イオン銀行は私の申込時点ではがん団信とワイド団信は受入保険会社がイオン・アリアンツ生命だが、一般団信は日本生命だったので、一般団信で出し直すこともできたのではないかと想像する(確認はしていない)。

※6 参考まで、フラット35の受入保険会社は金融機関等と物件所在地の組み合わせにより異なる。https://www.flat35.com/danshin/chiikikanji.html

背景知識の補足:団信について

  • 一般団信とは、団信のベースラインであり、ざっくりいうと被保険者が死亡した場合に保険金が支払われる(ローン残高がゼロになる)。
  • がん団信、三大疾病特約、などは、それ以外、つまり生きているうちであっても特定の病気と診断され所定の状態になったとき(保険により異なるが、一例としては就労不能状態が一定期間続いたとき)に保険金が支払われる。一般団信よりも手厚い保障になるが、その分だけ加入条件は厳しくなる。また、本来は保険料も割高になる(=住宅ローンの金利に上乗せされる)はずだが、2023年現在、金融機関の価格競争のなかで上乗せなしで附帯される場合もある(もっとも、それはつまり金利に最初から含まれているということになるわけだが)。
  • もっと細かいことを言うと、がん団信とか三大疾病特約とか名乗っている保険商品も、中身を詳しく見ると保険料が支払われる条件に差があって、一口で比較できるものではないのだが、本稿ではそこまで深くは立ち入らない。あと、一般団信が多くのローンにおいて必須の条件であるのに対してこれらはあくまで特約、追加のサービスであり、つけるかつけないかは任意で、リスクに対する考え方や年齢などのファクターによってつけるべきなのかの判断は変わってくる。謝絶されるのは選択肢が減ると言えるけど、絶対困るのかというと必ずしもそうではない。
  • ワイド団信とは、受入基準を緩和している商品で、持病がある等で一般団信に加入できない場合であっても加入できることがあるというものである(保障内容は基本的に一般団信と同じ)。加入条件を緩和している分だけ保険料が割高(=住宅ローンの金利に上乗せ)となる。
  • 団信の審査は住宅ローンを借りる金融機関ではなく提携する受入保険会社によって行われるので、異なる金融機関でも同一の保険会社であれば基本的には同じ結果となるはずである。
  • 逆に同一の金融機関であっても受入保険会社が変われば結果が変わりうる。よって、上記の表では融資機関を見るより受入保険会社の方をみた方がよい(ネット上の口コミで単に「○○銀行でどうだった」と書いてある場合、○○銀行の団信の保険会社が変わっていたらその情報に意味はない。割と何年かすると保険会社が変わったりしている)

潰瘍性大腸炎について

  • 潰瘍性大腸炎の患者は大腸がんのリスクが高くなるとされているが、寿命(生存率)は一般と比べて差がないといわれている(たとえば:https://www.uctomorrow.jp/uc/progress 、あるいは後述の『潰瘍性大腸炎の診療ガイド』)
  • ということは、素人ながら考えれば、(軽症の)潰瘍性大腸炎の患者は一般団信に関しては大きな問題はないが、がん団信やがんを含むN大疾病特約などに通ることは難しい、と想像する(実際には年齢など他の要素が加味されるはずだが)。私の結果に関しては概ねその通りになった。
  • そういう知識はなんとなく、診断を受けたときに調べてぼんやりとは知っているのだけれど、なかなか実感というのは得られないもので、今まで全然考えたことはなかったのだけれど、でも保険というのは人間の命や健康を統計で計るもので、実際にこうして三大疾病特約断られると、「お前はがんになる確率が常人より高い」と言われているようなものであるし、一般団信飛び越してワイド団信を案内されると、「お前は死ぬ確率が常人より高い」と言われているように聞こえるし、いや聞こえるっていうかそういう意味でしかないので、正直かなりきつい。胃が痛い。胃じゃなくて腸か。
  • まあでも、たまたま既に見つけている(見つけたこと自体はラッキー!)病気ひとつでそういう話があってというだけであり、あまり自分の身体のことは信用していないので他に全然関係ない大きな病気がこの先突然やってくることだって普通にあり得ると思ってるし、それ以外の様々な要因で働けなくなったり収入が減ったりしてローンが返せなくなったりそれ以外にも人生に様々な影響を受けたりすることもごく普通にあり得る、明日のことはわからない、まして35年先なんて、でもそもそもそんな全てをヘッジできる保険なんてないし、いま現在とりあえず元気で、美味しいものも食べられて、住みたい家に家族と住めたら、それでかなりハッピーなんじゃない? きっとそれくらいの気持ちでいたほうがいい。

おまけ

■潰瘍性大腸炎の情報でオススメの本(ちなみに「治せる!」的な本は絶対読むな。治し方わかんないから難病なの)

『ウルトラ図解 潰瘍性大腸炎・クローン病』久松理一 監修

  • 分かりやすくまとまっている。

『潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第4版』NPO法人日本炎症性腸疾患協会(CCFJ) 編

  • 専門書だから半分くらい何言ってるかわからないが、自分の病気のことなんだから読んで損はない。

■住宅ローンの情報でオススメの本

『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』千日太郎

  • 説明がロジカルで分かりやすい。
タイトルとURLをコピーしました