SFスリラーゲームということになっている。 低軌道宇宙ステーションObservationを舞台に、何らかの事件が起きて主人公が意識を取り戻すと、ステーションの電力が低下、地上との通信が途絶し、他のクルーとも連絡が取れない……という状況で謎を解いていくアドベンチャーゲームなのだが、プレイヤーが操作するのは主人公(?)の宇宙飛行士Emma Fisher、ではなく、宇宙ステーションの管理AI・SAMだというのがこのゲームのポイントです。AIになってEmmaを助けるためにハッチを開けたり閉めたり故障したシステムを復旧させたりする。ゲーム開始時点でSAMは機能の大部分が使えない状態だし、メモリーコアの大部分を損傷していてなぜこのような状況に陥ったのかもわからない。しかしどうやらSAM自身もこの事象に大きく関わっているらしいと段々わかってくるという趣向。『2001年宇宙の旅』にインスパイアされた作品であることが制作側から明かされており、確かにSAMのポジションはHAL9000的であるし、他にも明らかに『2001年』オマージュ的な要素も登場する。
ゲームとしてはクソだるいと言わざるを得ない。管理AIであるSAMは、基本は宇宙ステーションを構成する各モジュールに2、3個ついているカメラを操作して、パンし、ズームし、ラップトップであったりハッチのコントローラーであったりに接続してそれらを操作していく。しかしその接続というのがなぜか数字3桁を入力するという謎操作であったり、ハッチがロックされているときは回路図のグリッドを表示して別途入手しておいたコードの通りになぞる、とか、挙げ句の果てには特に説明無く磁力を調整して核融合炉を安定させろとかいう無茶ぶりを受けることになる。超高度AIも実はこんな地味な手探り作業をしていたのか……。次に何をしろみたいなミッションは画面に表示されるのだが、●●に向かえと言われてもそれがどこにあるのかわからなかったり、必要な操作対象がかなり見つけにくいところにあったり等、不親切さにより過剰に難易度が高いと言わざるを得ない場面もいくつかあった。
しかし、そのゲームのだるさをしてなお、この作品はともかくかっこいい。まず上記のトレイラー見たらわかると思うけれど、グラフィックのクオリティが非常に高く、作り込まれた宇宙ステーションの内部をノイズ混じりのカメラ越しに見る没入感は半端なものではない。演出のかっこよさも抜群で、映画みたいなクオリティがある。声優のクオリティも高い。SF系の映画、それこそ古典では 『2001年宇宙の旅』 、わりと最近ので言えばゼロ・グラビティ(Gravity)とかインターステラーとか好きな人は、やるべきです。ゲームはだるいけど。ゲームは本当にだるい。