【感想】『世界樹は暗き旋律のほとりに』 藤あさや

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 ガチSFです。自分がよくSFを僭称して書いてるやつのことが思いやられてやべえなという気持ちになる。地球と宇宙を結ぶ楕円軌道リングが『世界樹』として存在するパラレル世界を舞台に、メアリー・アニングやニュートンが登場してSFをやっていく話。もちろんそういう話だからヴェルヌ要素もちゃんとある。正直ケプラーの方程式とかいやもう忘れたわというか勉強したときも理解できたかどうか怪しいわという読者としては、理屈が書いてあるパートはあんまり読めてないんだけど、でも技術的・歴史的な考証が丁寧になされているのはしっかりと伝わってきて、好感。三部構成になっており、それぞれ主人公が異なり、時間的にも離れた時期を書いていることもあって、群像劇とまでは言わないんだけど、(特定の人物の冒険活劇を掘り下げるのではなく)『世界樹』というシステムそのものを冷静な視点で書いていて、これもハードSFらしい取り組み方なのかなと思った。SFなんていう言葉の定義は滅茶苦茶に広いし、広くていいと自分は思っているんだけど、その前提の上で、こういうSFを書いている人が文フリとかKDPで作品を発表してるのって面白いし世界が広くて良いよなと思います。三部の中では真ん中の『アナレンマの黄金樹』が一番好き。

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