掌編8編を収録。『ジャパニーズ・ライフ/羊の反逆』と続けて読んだけれど、こちらのほうが各編は若干長いような気がする。内容的にはこちらのほうが優しい感じの読後感のものが多い。『羊の反逆』のような怪談的わかりやすいオチみたいなのはあまりない。どっちが良いとかではないけれど、全体としてはこちらのほうがより好きかなと思った。
特に好きだった作品は『星のない男』、『手品師の弟子』、『迷霧』。『星のない男』と『手品師の弟子』は、どちらも不思議な設定(大好きなコロッケが食べられなくなって消えてしまいそうになる身長5センチの男、物を他のものに変えてしまう不思議なクセのせいで失敗ばかりの手品師の弟子)がありながら、それが伏線みたいに活用されたり回収されたりするでなく、優しい感じに締めくくられる(たまたまか知らないけれど、星の要素が2作品に共通しているな)。良い読後感が残って好き。『迷霧』は、ジャンルとしては怪談的なのだけれど、オチを付けてゾッとさせるタイプではなく、じわじわと怖い話をするタイプで、やはり読後感が良かった。肖像画を描くという行為と怪物の形相が結びついた話で、醜くなることで人のしがらみから解放されるという下りが面白かった。