【感想】『BETRAYAL』 ナの字

BETRAYAL (pixiv)

「あまり明るくない」艦隊これくしょん二次創作小説。

 艦これのことはそんなに詳しくないんですが(は?)、この小説はすごいので2秒以内に読んだほうが良いです。長期連載が続いていましたが、この度完結とのことで、ラストは本当に良かったし2秒以内に最初から読み直したくなりました。そういう小説は強いぞ。

 二次創作の自由度が高いゲーム業界にあって、だからこそこの作品の強いところは主人公(?)のキャラクターであると思います。原作ゲームにおける透明なプレイヤーキャラである提督をどうするかという問は二段階くらい越えて、主人公(?)の『幌村』は提督ですら無く(?)、かといって全然無関係に勝手に創造されたキャラとも言えない。はてなが多すぎるのはまだ咀嚼しきれていないからですが。いやでも本当に、ここに関しては歴史的に見ても赤羽根Pか武内Pか幌村かと言って良いくらい成功している二次創作主人公なんじゃないかと思いました。この喩え要る?

 幌村の造形とヒヤヤッコ提督は白眉だと思いつつ、じゃあこの作品は設定で勝ったんですかといえばもちろんそういう事ではないと思います。艦娘と深海棲艦の解釈、レ級に対する意味付け、物語の結末のどれにせよ、他でやられていないであろうとは言えない内容と思うのですが、そこに至るまでの地獄のような道程を幌村たちが走りきったところに読者は苦しめられて安堵すると思いました。途中途中の重苦しい挿話や絶望的な描写、緊張感、そんな中に忍び込んでいるパロディとか笑い所(本当にそんなのありましたか?)、どれをとってもレベルが高い。

 ところで、艦これでなんかいろいろ仮託されがちな艦娘ランキングというのが業界にはあり、ベスト3は順に漣、あきつ丸、龍驤らしいんですが、揃っています(?)。そのあたりを間違いなく外していないのも本作のポイントではないでしょうか。艦これのことはそんなに詳しくないですが。

 ナの字氏のオリジナル長編とかも読みたいなと思っているので頑張って欲しいです。読んでいて楽しかったです。お疲れ様でした。

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