上下巻それぞれ700ページ近い。長かった。岩波文庫のくせに700円もするんですからね! いや、買ってないですけれど。図書館活用してます。
物語の内容以前にまず一番印象深かったのは、語り手の半透明性です。一応語り手(新聞記者らしいですね)が存在して、一人称部分で語られるところとか、事件に直接関与するところがあったりします。一方、三人称視点で、神の視点のごとく語る部分もあったり、うーんわけわからん。「私は必死にスチェパン氏の元に走った」とか「私はピョートルに殴りかからん勢いで……」みたいな、明らかに語り手の存在感が強調される文章がある一方で、「スタヴローギンはそのまま数時間のあいだ、一人で想念に沈んでいた」みたいな、どう考えても神の視点な文章もある。(ここに書いたのはうろ覚えによる引用です)
ともかく、そのとらんするーせんとな語り手が印象的でした。
話の内容もまた壮大で、各人物の動かし方にドストエフスキー的なうまさがあって、面白かったです。ただ、無駄に殺しすぎかなぁってのと、若干構成の緻密さが劣るという点で、『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』には、自分の中で及びませんでした。