Amazon.co.jp: 冬期限定ボンボンショコラ事件 (創元推理文庫) : 米澤 穂信: 本
堤防道路でひき逃げに遭い、脚の骨を折って入院生活を送ることとなった小鳩。枕元にはどうやら彼が寝ている間に見舞いに来ているらしい小佐内さんから、復讐、もとい犯人探しの進捗メッセージがある。小鳩は同じ堤防道路で起きたかつてのひき逃げ事件を追想する。それこそが二人が失敗し、小市民を志すに至った事件だった。
堂々たるシリーズ完結だ。二人の馴れ初めにして小鳩のトラウマになった事件が扱われるのは当然、しかしそれが現実の冬のタイムラインにおいては小鳩くんが入院状態で全部やるという、安楽椅子探偵どころか骨折寝たきり、という趣向。それで動きが少ないかというとそんなことはなくずっと不穏でエキサイティングに話が進み、二つのひき逃げ事件の真相が同時に見えてくるのが盛り上がる。代わりに動く(代わりに動いてるか?)小佐内さんとの距離感も絶妙で良い。終盤の犯人を追い詰めての見せ場パートはそこでそんなことにはならんやろ感あるんだけどもうそこまで行くと全てが楽しくなってるから全然許すわとなる、マジックというか、作者と読者の共犯関係が働いている(それでは一生ミステリは読めないですね)
なんかこのシリーズが完結する頃には二人は訣別しそうとか、どっちか死にそうとか思ったものだが、前者は途中でやったし、後者は幸いそうならずにすんだ(命の危険を感じた、ということで回収でいいだろう)。二人の季節の続きまで見せてくれたのは、そんなスイーツが出てきていいんですかという感じでよかった。甘い甘すぎる。