【感想】『小説』野﨑まど

小説現代 2024年10月号 | 講談社 |本 | 通販 | Amazon

 小説現代で読んだ。単行本は11月発売予定。

 小説を読むことが全てだった少年・内海は、小説を通じて初めてできた親友・外崎と二人、小学校の近くの謎の屋敷に住んでいるのが小説家だと知り、いても立ってもいられずに屋敷に侵入、そこで謎の小説家・髭先生と出会う。蔵書を自由に読んでいいと言われた二人は屋敷に入り浸り、ひたすらに本を読み続けるが、やがて二人の行く道は分かれることになる。

 単行本が出たらまた読み直して改めて感想をまとめたいとおもうけど、とりあえずメモ。野﨑まどの過去の作品に関連付けたネタバレが含まれる。

 小説を読むことについての話。『2』が創作することの話であり、あれから時は流れ、あのときからそうだったのか、最近さらにそうなっているのかわからないけど、クリエイターの特別さがやたらと称揚されるこの世の中で(あるいは生成AIみたいなものが勝手にそれに対するカウンターとして武器にされ何かみんな殴り合っていたりするこの世の中で)それに対してまっとうに、正面から、書くことと読むことを対等で等価なものとして位置づけて、読むことの意味をテーマにした話だと思う。明確なテーマがあり、問いがあり、意外でありながらきちんと(?)論理的に導き出される答えがある、という構成は野﨑まどらしさの期待を裏切らないし、後半、髭先生の後を辿って取材をしてパズルのピースを集め、最後にそれをくみ上げる流れなどは『2』で最原さんを追いかけたときの記憶を感じさせつつ違う切り口でもう一段掘り下げた答えになっていると思った。その一方で、新しい試みはたくさんなされており、切れ目なく人称・視点・場面が変化してしまうなんだか変な語り方(たとえば寄合則世がいきなり出てきたとき何が起きたのか全くわからなかったし、いきなり宇宙創世のスケールになったときはさすがに笑った。卵の殻の下りとか『2001年宇宙の旅』のアレな感じ)、前半部や相模原時代のリアル感を狙った書きぶり(後半のファンタジー展開との温度差がすごい)などは新鮮に感じた。特に最初の方から内海の人生を立ち上げていく語りはかなり好き。髭先生のネタばらしは、またそれ(長期間に渡って普通それやらないだろという仕込みをしている人がいるパターン)かよ何回か読んだ&見たぞそれ、というところはあった。好きだけど。新井編さんはさすがにちょっと消化不良ではないかと思った。ほかの脇役たちは一応一通りの活躍があったのに(佐藤学は意味不明だったが)。

 もう一度読むのが楽しみです。

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