【感想】『留年百合アンソロジー ダブリナーズ 卒業延期DLC』ストレンジ・フィクションズ

【電子版・別冊】『留年百合アンソロジー ダブリナーズ』追加DLC - ストレンジ・フィクションズ - BOOTH
**注意** 本アイテムは『留年百合アンソロジー ダブリナーズ』の電子限定追加DLCとなっております。お間違えなきよう注意してください。 (本篇はこちら) あの留年百合に追加DLCが登場! さらなる研鑽(留年)と積み、留年百合はより輝く! ...

『留年百合アンソロジー ダブリナーズ』のDLC。DLCってなんだよ。本誌の締切に間に合わなかった原稿の敗者復活戦と、追加でもう一本書こうという意欲者の作品が収録されています。同人誌におけるDLCという概念、画期的な発明だな……。

入ヶ岳愁「スピン」

 自分とは正反対の履修をしているゆかりと知り合った青子は、やがてゆかりとルームシェアを始めるが、彼女は青子に心配や負担をかけまいとあらゆることで遠慮し、本音を打ち明けない。悩んだ末に始めた「一行文通」が二人の距離を近づけるのだが、同じ部屋にいながら彼女が隠していることはまだあった。

 ゆかりさんかわいすぎるだろ。世が世なら「萌え萌えすぎる」みたいな感想を書いていたかもしれない。世が世ではないので書きませんが……。本誌の各作品を読んでもわかるとおり、留年百合って総じてディスコミュニケーションなんだよね(これは運転免許の学科試験だと×になる可能性がある。なぜなら百合は総じてディスコミュニケーションだからだ) その点でも大好物な構成でした。

孔田多紀「listening time― 木村琴子のASMR日記」

 木村琴子が「犯行」に至るまで、ベストな音源を求めてASMR音声作品をdigる経緯をしたためた日記。本誌掲載作品「パンケーキの重ね方。」からのスピンオフ。

 ASMR音声作品の紹介パートがやたらあるのが面白すぎた。一本や二本じゃなくてどんどん出てくるのが呆気にとられるというか、笑ってしまう。それで先生はそんなのまで書いているのか、という本編からのネタを回収しつつ、何か良い話になっているのが毎度のこと、すごい。ところで、シリーズの途中が読めなくて、という話を前にしましたが、なんと、いま、読める! 「胡瓜の絞り方。」あらため「サウナとサンドイッチ」、サウナのシーンの一連の流れが良すぎて「脳に良いな~~」ってニヤつきながら読みました。そしてそれを読んだ上で「パンケーキの重ね方。」を読むと、把握できていなかったディテールが立ち上がってきてまた脳が良くなってしまった。続きも楽しみです。

織戸久貴「九単位は多すぎる」

 留年生にして元名探偵の先輩と共に夏の風物詩であるところの巨大かき氷チャレンジをしている最中、隣に座っていた男性が発した「九単位は多すぎる」という言葉から推理を展開する、九マイルもの

 九マイル先行作品に詳しいわけではないのでフィーリングだけの話として、九マイル的にはそこまで意外性のある結論にたどり着いたという感じはしなかったかもしれない、というよりそんなことよりもっと気になることがしれっと書いてあってそっちに意識がいく。なんかよくわからないが本編にクロスしている元名探偵要素が、謎の暗い影を投げかけている。これって不在の姉ですか? 不在の姉が気になりすぎる。

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