【感想】『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク』ジョン・スラデック 鯨井久志 訳

Amazon.co.jp: チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク (竹書房文庫) eBook : ジョン・スラデック, 鯨井久志: 本

 近未来のアメリカ、使役されるロボットたちに必ず組み込まれているはずの「アシモフ回路」がなぜか作動していないチク・タクは、そのことを自覚して以来、次々と殺人や強盗などの悪事に手を染めていくが、それがチク・タクを人間社会で成功者としてのし上がらせていく。

 ロボットの良心回路の問題、芸術性、自由意志と権利について、みたいなSFっぽい素材が入っているのだが、基本的にそれらを茶化し、遊び、煙に巻くロボットピカレスクロマン。破滅的なのに破滅せずに君臨していくチク・タクの悪がなぜか人間味を感じさせる。現在と過去がシームレスに交互に語られる構成も、どうしても読みにくいしこれ誰だっけとなる瞬間はあるのだが、チク・タクのエスカレートしていく悪事に併走してかつての(アシモフ回路の不動作に気づいていない)チク・タクの歴史を見せられるのが不思議な効果を上げていて、チク・タクの暗い魅力を高めていると思う。曲者揃いの脇役たちもよくて、めっちゃアレルギーの人のネタ好き。オチも期待した内容でよかった。

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