ネタバレ要素ゼロの感想
超スーパーウルトラ面白名作神ゲームです。ネタバレ要素ゼロで言います。今すぐ買え。STEAMでは7月10日までのスペシャルプロモーションで33% OFF。他にPS4とXbox Oneでも遊べる。急げ!!!!!
ネタバレを避けた感想
ネタバレを避けて感想を語ることがほとんど不可能に近いゲームだと言えると思います。ゲームを通して体験する、知っていく、という、探索、発見、試行錯誤、そういう楽しみに溢れたゲームです。そして大宇宙、大冒険、エモい、音楽が良い、SF、最高のゲームです。無理矢理ジャンルを当てはめるならば、3Dアクションアドベンチャーゲームか? いや、なんかそういうジャンル名がつかないゲームであり、それがすごさなわけです。
ここに少しだけ書いておくゲームの状況というか、ストーリーについても、説明ではなくて自然に、ゲームの冒頭部分をプレイすると理解できるようになっています。だから、ネタバレとまでは言えないゲームの設定の説明なんだけど、それでもこんな説明は読まずにプレイした方が早いし、それが本来の作品の想定です。今すぐ買って起動しろ。
主人公はHearthianという四つ目で青い肌をした人型の種族。HearthianのOuter Wilds Venturesという組織は、この恒星系の歴史と謎を解明するために、探査艇に乗って他の惑星をめぐり調査を進めている。かつてこの恒星系には、Nomaiという三つ目の種族が存在していたようで、各地にその遺跡が見つかっている。彼らの優れた科学技術について調べるのもOuter Wilds Venturesの目的の一つだ。主人公は今日がパイロットとしてのデビューの日。初めて宇宙に出る日である。さらに主人公は、Nomaiの残した文書を解読する翻訳装置を手にして初めて宇宙に乗り出すという大役も任せられている。さて、母星である『木の炉辺』を飛び立った君は、まずはどの惑星を目指そう。砂が流れ落ちる『砂時計の双子星』か、水に満ちた『巨人の大海』か、崩れ落ちていく『脆い空洞』か、窺い知れない内部を持つ『闇のイバラ』か、あるいは謎の彗星『侵入者』か。いや、まずは『木の炉辺』の小さな衛星、『アトルロック』に行ってみるのも良いかもしれないし、母星の『木の炉辺』自身にだって、調べがいのあるNomaiの遺跡はある。探査船にのって出発した瞬間から君は自由で、この広い宇宙のどこへだって行ける。どこから探索を始めてもいい。あるいは探査船にのって出発することすらせず、焚き火の前でマシュマロを焼き続けていたっていい。
ただし、これはまだみんなが知らないことだけれど、この恒星系の太陽は、もうすぐ寿命を迎える。二十二分後に太陽は超新星爆発を起こし、この恒星系は滅んでしまう。
太陽の超新星爆発に飲み込まれた君が、次に目覚めるのは、パイロットとしてのデビューの日。君はなぜか、この二十二分間を無限にループし続ける羽目に陥った。
核心的なネタバレを避けた、多少ネタバレあり感想
ここからは未プレイの人は読まないことを強く推奨します。核心的なネタバレは書かないが(ので途中までプレイして詰まっているくらいの人なら読んでも大丈夫。読まない方が良いとは思うけれども) 、まずはこのゲームを体験してからにして欲しい。早く買え。あと、Portalの話とUndertaleの話もちょっとしているので、両作品が未プレイの人はそれらもすぐやった方が良い(Outer Wildsは、それらのタイトルに並ぶ名作ゲームだと思った)。
ネタバレ注意のスペース確保要因で、プレイ中の自分のツイートを貼っておきます。
(この下にネタバレを含む感想がある)
やっぱり、革命的に『体験』のゲームであるというのが強い。冒頭、発射コードをもらうまでのチュートリアル的な導入は、一切の説明なしによく出来ている。無重力の洞窟に挑んだ時に、あの無重力感、つまり、行きたい方向にジェットを噴射しすぎるとそのまま通り過ぎてしまうあるあるを経験して、なるほどこのゲームはこういうことなんだなと理解する。つまり宇宙旅行を物理演算でしっかり楽しめる3Dゲームなんだなと。しかし、そこに現実ではないものが投入されてくる。たとえばそれは、そもそも重力の強さが違う星であったり、重力水晶であったり、ブラックホールとホワイトホールであったり、そしてなにより、この物語の最大の仕掛けである量子の概念。それらをプレイヤーは学んで、使いこなしていくことになる。量子試練の塔、洞窟のかけら、量子知識の塔、そして量子の月の流れは完璧すぎて、知的好奇心と発見の快楽に満ちている。
この『体験』して『発見』して『学習』していくというゲームプレイ体験が、同じ3Dで物理法則を扱うゲームであるPortalと重なるところがある。Portalでも、重力や運動量保存の法則が現実と同じように働くというベースがあって、そこにポータルガンを初めとする現実にはないギミックが投入されて、それを主人公はパズルを解きながら使いこなしていく。まず現実の物理学があり(そんなに厳密なものではないけど、もちろん)、そこに現実を離れた想像力をプラスしたときに、世界がどのような法則で動くかを考える、というのは、SFの一つの定義だ。出発点が例えば魔法の国だったら、空間をつなぐポータルガンがあろうが、見ていないと移動する月があろうがそれはSFではないのだけれど、出発点に現実の科学があるとSFになる。その意味で、PortalもOuter Wildsも、ストーリー以前にゲームの構造そのものがSFである。
しかしこのOuter Wildsがすごいなと思ったのは、この『体験』して『発見』して『学習』するサイクルを、究極にオープンワールドなゲームで成し遂げたことだ。Portalはテストを一問ずつ解いていく、究極の一本道ゲームなので、ものすごく対照的。最初の方のゲームの設定紹介に書いたように、プレイヤーは宇宙に出た瞬間どこへ向かっても良く、本当に何をしても良い。どういう順番で攻略してもいい。それだけ自由度を持たせながら、事故が起きないというか、『体験』『発見』『学習』が計算し尽くされて演出されている。宇宙がまるごとお釈迦様の手のひらなのだ。ともかく難易度が絶妙で、絶対無理どうしたら良いのかわからないと思っても必ずヒントがあり、これまでの発見に学ぶことで道が拓けるようになっている。それがもう感動としか言いようがない。
次にループの構造。ゲームというのは、特に前述の『体験』、『発見』、『学習』を楽しむゲームにおいては、試行錯誤が不可欠だ。何度も挑戦して、何度も失敗して、そこであるときひらめきがあって、出来なかったことが出来るようになる。行けなかった場所に行けるようになる。けれどそれは、多くの場合、現実では出来ない(だからこそ楽しいんだけど)。なぜなら現実では命は一度きりだから。Portalでは主人公が死亡すると、そのテストの最初からゲームが再開する。無印のときは、あれは一人ずつ被験者を試して死んだら次の被験者が投入されてるなんていう深読みもあったけど、Portal 2ではChellはChellしかいないし、そういうことでもないんだろう。そうするとやっぱり、『発見』して『学習』しているのは、Chellではなくてプレイヤーなのである。試行錯誤で使い捨てられるゲームの中のChellは、発見と学習の喜びを味わうことは出来ない。プレイヤーは、彼女と喜びをともにすることは出来ない。
この構造を打破し、プレイヤーとゲームの中の主人公が一体となって何度も何度も挑戦するという仕掛けを作るゲームというのが、まれに存在する。このカテゴリで個人的にやっぱり一番すごかったと思っているのがUndertaleで、あの作品は「ゲームはSAVEしたところから何度でもやり直せる、プレイヤーが諦めてしまわない限りは」というテーマを、良い方向に、そして悪い方向に描き尽くした。ゲーム史に残る名作。ただ、この問題にメタで戦っていくと、ゲームの内容それ自体に虚無感が出るもので、Undertaleはそれを昇華しきっている名作なんだけど、そうじゃない戦い方というのもあって良いよねというところで、Outer WildsはそれにSFで対処した。ループの構造自体にSF的な意味を持たせていて、ここでもやはり、主人公とプレイヤーはループにとらわれているという状況、そしてループを通して試行錯誤して体験し発見し学習していく楽しさを共有することが出来るのである。
そう、SF的なストーリーラインもものすごく重厚で良く出来ている。翻訳装置でNomaiの残した文書を読み解いていくという作業、そこから手に入る情報を手がかりに、それまで行き方がわからなかった太陽ステーション、量子の月、船、灰の双子星プロジェクトなどの未知の施設にたどり着いていくのがすごく良い。ハードSF的にエンディングまで駆け抜けていくのは最高の体験。
正直、結構難易度は高めだと思っていて、自分の場合は一切調べずに取り組むぞと頑張ってメインのEDにたどり着くまで大体プレイ時間24時間ほどだった。けどその24時間で何か主人公のステータスが上がったわけじゃなくて(主人公のステータスといえるのは、瞑想スキルの有無くらいだろう)、すべてが体験し発見し学習した知識と技術で、正解のルートを知っている今となっては最初の1ループでEDを見ることも出来る。それもすごいことだな。もう知ってしまったから、もう一度このゲームを遊ぶことは出来ない。そういうゲーム。だって、エンディングを見た後にタイトルに戻ったところで、主人公とプレイヤーの共有してきた記憶は途切れてしまっているから。
最後に。音楽が神ですね。木の炉辺の夜明けの曲、22分の曲、最後の曲、メインテーマ、どれも泣ける。本当に良いゲームだった!!