第二十九回文学フリマ東京にて入手。上記はKindle版。
前回の『モンスター小説集』がメチャクチャ面白かったので、今回も期待して読んだところ、メチャクチャ面白かった。
簿記とAI(高田敦史)
コンタクトモノとAIモノに複式簿記がぶつかるという、「いや会計SFってなんだよ」を「あ、これ会計SFだ」に変えてくれる最強の冒頭作。醸し出してくる雰囲気や周辺設定の広がりがすごくて、ページ数結構あるんだけどあっという間に読んでしまった。これ全然続き読みたいし、長編向きに感じる。
MNGRM(旅岡みるく亭)
会計というよりは功徳経済の話かな。宗派の違い云々のところが面白かった。話的には盛り上がりはこのあとのように思って、ちょっとすぐ終わりすぎた感じもあり、もう少し読みたい。
サイボーグは冷たい帳簿の中に(森川 真)
本書で一番好き。脳埋め込み計算機が体重の1%までなら福利厚生費だけど1%超えたら資産化しないといけないとか設定が強すぎる。公開会計と経理のゲーミフィケーション『副社長リーグ』とかメチャクチャな設定なんだけどSFとしてまとめ上げている手腕が光るし、雪夫の母親に関するドラマがきちんとドラマしていながらにして全部ちゃんと会計処理になっているのも正しく会計SF。『簿記とAI』が複式簿記の歴史的側面とかをうまく使っていたのに対して本作はかなりテクニカルに会計SF。「早く帰って会計しないと」とか笑わせてくれるのも良い。あとタイトルが深い。
複式墓地(渡辺公暁)
ダジャレやんけ。SF色は弱めなんだけど会計の使われ方は秀逸。西洋伝奇モノ的な位置づけのほうが近いと思うけど、そこに複式簿記が持ち込まれると変なおどろおどろしさが出て良い。手形のとこで急にそういうのが来たから笑ってしまった。
日商簿記2級受験記(高田敦史)
これ読むと受けてみたくなるな。