【感想】『HELLO WORLD if ―勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする―』 伊瀬ネキセ

 HELLO WORLDのスピンオフ。野崎まどが書くわけじゃないし別に読まなくていいかと最初は思っていたのだが映画が思ったより良かったので読んでみた。残念ながら期待値を超えてこなかった感じはある(ただ、レビューとかで結構評価が高かったりするので、not for meだっただけで、普通に映画から見た人には楽しめるようになっているのかもしれない)。

 野崎まどでありがちな「序中版でいい感じに出てくるサブヒロインが、プロット上不要である場合(用済みになった場合)終盤完全に空気になる」現象を真正面で食らっている「かでのん」こと勘解由小路三鈴が実は裏でこんな活躍をしていた、という本編補完型スピンオフで、せっかく魅力的なキャラクターなのに後半全く登場しないかでのんの活躍を描く外伝があるのは良いことなんだけれど、いまいち乗れなかった点が2つ。1つは完全に原作に乗っかった二次創作・アナザーサイド的な書き方に留まっているように感じられたこと。本編(小説・映画)を鑑賞済みの読者を前提としているとはいえ、本編での人物像とか展開とかSF設定をあまりにも所与のものとして使いすぎていて、三鈴の心情の流れとか順応の仕方とかが流石にご都合主義過ぎるように見えるし、結局全体のストーリーは本編と同じ流れをたどるだけなので、先の展開が気になるみたいな思いがあんまり湧かない。もう1つは、せっかく公式スピンオフであるのに、本編でみんなが気になった部分を補完する設定、具体的にはルリの動機とかあっちのアルタラの設定とか救出プロジェクトの内容とか映画で映ってたあの場所とか、そういうのを書いてないこと。これは公式スピンオフだからこんなことが書けるんだぜというところ踏み込んでほしかったなぁと。

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