ねじれ双角錐群の《毛》ホラーアンソロジー『よだつ』文学フリマ東京37にて!

 これまで基本的にはSFジャンルで小説を書いてきたけれど、今回のテーマはホラーということで、正直何を書いていいかわかりませんでした。深夜のdiscordで、次回はホラーにしよう、と決まったそのときにはワクワクしていて、よっしゃホラー書いてやろう、と思っていたものの、いざネタを出そうとすると何も出てこない。いや、それいつものことじゃないかと言われれば、はい、いつものことではあるんですが、あるんだけれども、でもSF書くときよりもその何も出てこない時間が長かった。思うに、自分がホラー小説をあんまり読んでいないために、「こういうホラー小説が書きたい!」といういわばロールモデルのようなものを持っていないからなのではないかと思います。

 悩んでいくうちに、それがホラーを包含するのかされるのか、ベン図を書いたらどうなるのかわからないですが、ホラーじゃなくて怪談だったらありかもしれない、と思いました。

 怪談が流行っているというのは最近ひしひしと感じていて、小説を書いている知り合いも怪談に手を出している人が何人かいるし、実話怪談プレイヤーと相互フォローになることも増えてきました。怪談の配信なんかも結構聞いています。

 よしそれならば、自分も怪談をやってみようということで、本腰を入れて怪談を聞き、読み、調べ、取材を……取材をしようと思ったのですが、これが難しい。

 一応これでも、SFを書くときにも取材はします。しかしそれは文献取材にしても、現地取材にしても、大部分は一人で完結するものでした。それに対して怪談の取材は相手の話を引き出す必要があり、当然ながら一人ではできない。職場の同僚であるとか学生時代からの友人たちには、私はそもそも小説を書いていることを教えていないので、いきなり怪談の収集をはじめたなどとはとても言えない。ではハンドルネームの立場でオンラインではどうかというと、それもキツくて、いやキツくないですか? 怪談のプレイヤーという位置づけで普段からやっているひとは全然大丈夫でしょうが、私のキャラだと難しい気がしませんか? 私がツイッターで怖い話募集したらなんか変な大喜利みたいになりませんか? 自意識過剰か。

 だから横着をしようと思いました。

 私が直接取材するのが難しければ、他の人の取材した怪談を取材させてもらおうと。良いところだけ横取りさせてもらえないかと。


 ……と、上記は私の作品「取材と収穫」の冒頭部分です。文芸同人・ねじれ双角錐群はこれまでSFジャンルで文学フリマに出店していましたが、今回はホラージャンルでの出店となります。まだSFで消耗してるの? 私は上記の通りで、ホラー書くのが難しかったので、インターネット人脈を駆使して怪談を取材したのを書きました。ありがとうインターネット。卑怯とは言うまいな。

 Webカタログはこちらです。

「よだつ」(ねじれ双角錐群 / 文学フリマ東京37 き-35) - 文学フリマWebカタログ+エントリー
文学フリマ東京37(2023/11/11(土) 12:00〜)【ねじれ双角錐群】のアイテム「よだつ」をチェックしてみよう!

 まず表紙ですが、全自動ムー大陸さんのかっこよすぎる作です。この時点で買ってください。

 上記カタログに作品紹介が掲載されているので是非チェックして欲しいのですが、私なりに一言ずつ推していくと、

「えいべさん オーディオコメンタリ版」 cydonianbanana

 ホラー映画のオーディオコメンタリ版。正統派、じっとりした怪奇オカルト系ホラー。

「カルマ・アーマ」 小林貫

 男子大学生がヤバい女「マヨギさん」に魅入られる。カルマとリビドーに満ちたサイコホラー。

「取材と収穫」 笹幡みなみ

 私のです。実話怪談の取材の取材の実話怪談。

「恢覆」 国戸醤油市民

 植物状態の主人公に試みられる新たな治療。疾走するモンスターパニック系ホラー。

「毛想症」 Garanhead

 毛に執着する男と、その前に現れる同好の士にして魔性の女。サイコスリラー。

「きざし」 鴻上怜

 ハゲつつあるという恐怖。多分これは狭義ホラーではない、でも、めちゃくちゃいい小説。

「新田くんのこと」 石井僚一

 髪をセットする新田くんについての語り。誰が語っているのか、どこまでが本当なのか。サイコスペクタクルホラー。


 以上、ねじれ双角錐群の新たな展開をお楽しみください。

 なお、ホラーという新天地に殴り込みをかけるにあたり、個人的に今週の金曜日10/27の夜にWebカタログのホラー怪奇ジャンルをdigるスペースを予定しています。よろしければどうぞ。

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